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『きっと、星のせいじゃない。』 (2014)

さわやかに胸に沈殿する、純愛ストーリー!

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瑞々しい若手俳優の好演、人生訓を提示する物語性と、硬軟が融合したまばゆい青春映画であった。
本作は、ジョン・グリーンが友人をモデルに書き上げたベストセラー小説の映画化。全米で公開されるやサプライズ・ヒットをかっ飛ばし、シャイリーン・ウッドリーを一躍スターダムに押し上げた注目作だ。こうした内容を評価されて興行を昇り上がった作品は信用できる上、脚色が『(500)日のサマー』(09)のコンビだというのだから、クオリティは保証済み。
いわゆる“難病モノ”というジャンルは根強い人気を保つも、最近は単なるお涙頂戴ではない洗練された作品も出てきている。そこに本作はどんな一石を投じたのか?興味津々で劇場へ向かったのだが…。

アメリカ、インディアナポリスに住む17歳の女の子ヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)は、末期のガン患者。なんとか薬で小康状態を保っているものの、酸素ボンベが手放せず、学校も不登校、当然友人もなく、家に引きこもる日々を送っている。見かねた母親(ローラ・ダーン)の薦めにより、ヘイゼルはしぶしぶガン患者の集会に参加。そこで片足を切断し、骨肉腫を克服した青年ガス(アンセル・エルゴート)と出会う。気が合った二人はすぐに仲良くなるも、ヘイゼルは長くは生きられない身を自覚し、一定の距離をおくのであった。
そんな折り、ガスがヘイゼルの愛読書の作家ホーテン(ウィレム・デフォー)とメールでコンタクトに成功。尻切れトンボの小説の結末を直に聞くべく、ホーテンが住むアムステルダムへ旅行することになるのだが…。

難病を患ったティーンエイジャー同士の恋愛モノと聞くと、つい身構えてしまうが、心配ご無用。確かに彼らは自分たちの境遇を悲観するし、サポートする両親の悲しみも描かれ、愁嘆場もたっぷり用意されている等、当該ジャンルの要点は押さえられている。しかし、暗い湿っぽさとは無縁で、先入観と実際の感触は随分違う。一重に脚本家の腕がいいのだろう。

明るい2人のユーモアある会話と、節々に提示される人生訓には大いに考えさせられる。火をつけない煙草、アンネ・フランクとのリンク等、劇中にはガスが好む“メタファー”が満載だ。
そして、理解ある善意の人々に囲まれ、ぬるくなりかけたところを、理想を壊す小説家ホーテンの登場でシリアスに引き締める。ウィレム・デフォーが怪演するホーテンの存在からは、様々なメッセージが読み取れよう。個人的には小説家という職業について、ふと思う。小説は誰のために書かれるのか。自己満足もあろうが、読者がいてこそ成り立つ職業である。小説を介した作者と読者それぞれの関係が成り立ち、時に解釈に齟齬をきたす状況は相互理解の難しさを謳っているように感じる。
その他者との交わりのひとつである恋愛の美しさや難解さといった彩りをとらえたのが、本作の形なのであろう。

よって、ヘイゼルとガスから、もともと限りある人生をたとえ小さな世界の中でも充実させ、幸せをつかむ心向きの大切さを教わった。「かわいそう」などという同情は誘わない。
しかも、かような高尚な感慨をうけながら説教臭くなく、むしろ肌触りは陽気で真っ当な青春映画となっているのだから奇跡である。

文字通り、立て役者は何といっても主役二人を演じたシャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートのフレッシュな存在感に他あるまい。彼らの光り輝く生命力が、湿っぽくなるところを清々しく爽快な風を吹き込んでいる。それでいて他者への気遣い、迫りくる死に対する恐怖という繊細な感情も炙り出すのだから、お見事!

オランダ・パートのロマンチックな旅情気分に反し、終盤は繰り返しが多く、蛇足のようにモタついてしまうのが残念ではある。
ただ、僕も『テラスハウス』は大好きであるが、このような良質な誠実作がもっと注目されてもよかろう。若者間でヒットして欲しいものである。


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