人生再スタートを謳う満腹ロード・ムービー!
仕事とは?家族とは?人生における大切な命題を、明るく楽しく描いた良作であった。
本作は、『アイアンマン』2作を大ヒットさせたジョン・ファブロー監督作。なんと数億円のギャラが保証された当シリーズ第3弾の監督を断って手掛けたインディーズ映画だ。脚本、出演した『スウィンガーズ』(96)に原点回帰した按配であり、大リーグのオファーを蹴って広島カープに入団した黒田博樹投手のごとく、もうその男気だけで映画ファンとしては敬礼である。
そして気になる題材が、ロスのフードトラック・ブームの火付け役となったロイ・チョイ氏をアドバイザーに迎えた料理モノだというのだから、興味はふくらむばかり。はたしてどんな作品になっていたのか、お腹をすかせて劇場へ向かったのだが…!?
ロサンゼルスの一流レストランの看板シェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、店に人気フード・ブロガー(オリバー・プラット)が来ると聞いて大ハリキリ。創造性のある特別メニューを提供しようとするも、オーナー(ダスティン・ホフマン)から反対され、仕方なく定番メニューを出すことに。案の定、料理は酷評。頭にきたカールが、よく仕組みの分かっていないツイッターで評論家に反撃したのが運のつき。SNS界で大騒動になり、オーナーとも揉めたカールは店を辞めてしまう。
思いがけず失業してしまったカールは、元妻(ソフィア・ベルガラ)の薦めでマイアミを訪ね、現地で食べたキューバサンドイッチに感動。当メニューを扱う移動販売を思いつく。さっそくカールは、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)とシェフ仲間のマーティン(ジョン・レグイザモ)と共にフードトラックでマイアミからロスへ商売の旅に出発し…。
多くの批評で触れられている通り、カールはジョン・ファブローのまんま投影である。
勤めるレストランのオーナーにあれこれ口出しされ、自分の思うように料理をつくれない。しかも言う通りつくったら、批評家にボロクソ書かれ、当人に悪態をつく動画がSNSで拡散して世界的に大恥をかく始末。プロとしてのプライドも信用もズタスタに…。
嫌気がさして仕事を辞め、心機一転、規模も極小化し予算は限られるも、自分のつくりたいものをつくるフードトラックの道を見出すカール。見下していたジャンクフードをアイディアを駆使して極上の味に仕上げ、食べてもらった人々を喜ばせる基本精神に立ち戻る。
そして、今まで仕事人間で息子パーシーに表面的にしか接していなかったカールが、自らの技術を伝えるという形で、はじめて心の底から触れ合っていく。
これらは、まんま本作に至るファブローの映画人生に当てはまろう。(あえて対象となる作品タイトルは記さないが…)
もちろん、放たれるメッセージは映画業界だけでなく、どこの世界にも当てはまる。
本作はそうしたテーマを軽妙なコメディ・タッチのロード・ムービーとして、人生哲学あり、家族愛あり、下ネタあり、ヨダレ流れる美食紹介あり、ご機嫌なラテン音楽あり、と盛りだくさんのエンターテインメントとして紡いでいく。皆、思わず笑顔になる肩肘の張らない、まさに満腹映画である。
また、もうひとつの提言として、様々な価値観の融合が挙げられよう。一流シェフとファストフードの組み合わせから、フードトラックでアメリカ横断をし、キューバ移民がアメリカに広めたサンドイッチに各地域の庶民料理とコラボしていくプロセスもさることながら、痛い眼にあったSNSを現代病と眼の仇にすることなく宣伝に有効活用、アナログと最新技術がきちんと手をとり合う道を示す。果ては遺恨を残した批評家との関わり合い、要するに作品と評論の相互作用もフォロー。映画人としての媚というより、ここは誠実さととろうではないか。
総じて前向きに転じる点が、実に清々しい。
役者陣もファブローの人徳なのだろう、ダスティン・ホフマンからスカーレット・ヨハンソンの贅沢な起用、ロバート・ダウニー・Jr.の特別出演等、超豪華だ。
テンポよく終盤までなだれこみ、すわ傑作かと予感していたのだが、ラストに少々難がある。最後にもう一捻り、山場、起伏があった方がよかったのではないか。個人的には、てっきり批評家との決戦で盛り上げると思っていたのだが…。なんとなくハッピーなまま、尻すぼみにフェイドアウトしてしまった感じである。
う~ん、ここはきちんとエンターテインメントの構成をとってほしかった。
それにしてもジョン・ファブロー、本作のような作品を放った後は何を撮るのだろう。動向に注目したい。
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仕事とは?家族とは?人生における大切な命題を、明るく楽しく描いた良作であった。
本作は、『アイアンマン』2作を大ヒットさせたジョン・ファブロー監督作。なんと数億円のギャラが保証された当シリーズ第3弾の監督を断って手掛けたインディーズ映画だ。脚本、出演した『スウィンガーズ』(96)に原点回帰した按配であり、大リーグのオファーを蹴って広島カープに入団した黒田博樹投手のごとく、もうその男気だけで映画ファンとしては敬礼である。
そして気になる題材が、ロスのフードトラック・ブームの火付け役となったロイ・チョイ氏をアドバイザーに迎えた料理モノだというのだから、興味はふくらむばかり。はたしてどんな作品になっていたのか、お腹をすかせて劇場へ向かったのだが…!?
ロサンゼルスの一流レストランの看板シェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、店に人気フード・ブロガー(オリバー・プラット)が来ると聞いて大ハリキリ。創造性のある特別メニューを提供しようとするも、オーナー(ダスティン・ホフマン)から反対され、仕方なく定番メニューを出すことに。案の定、料理は酷評。頭にきたカールが、よく仕組みの分かっていないツイッターで評論家に反撃したのが運のつき。SNS界で大騒動になり、オーナーとも揉めたカールは店を辞めてしまう。
思いがけず失業してしまったカールは、元妻(ソフィア・ベルガラ)の薦めでマイアミを訪ね、現地で食べたキューバサンドイッチに感動。当メニューを扱う移動販売を思いつく。さっそくカールは、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)とシェフ仲間のマーティン(ジョン・レグイザモ)と共にフードトラックでマイアミからロスへ商売の旅に出発し…。
多くの批評で触れられている通り、カールはジョン・ファブローのまんま投影である。
勤めるレストランのオーナーにあれこれ口出しされ、自分の思うように料理をつくれない。しかも言う通りつくったら、批評家にボロクソ書かれ、当人に悪態をつく動画がSNSで拡散して世界的に大恥をかく始末。プロとしてのプライドも信用もズタスタに…。
嫌気がさして仕事を辞め、心機一転、規模も極小化し予算は限られるも、自分のつくりたいものをつくるフードトラックの道を見出すカール。見下していたジャンクフードをアイディアを駆使して極上の味に仕上げ、食べてもらった人々を喜ばせる基本精神に立ち戻る。
そして、今まで仕事人間で息子パーシーに表面的にしか接していなかったカールが、自らの技術を伝えるという形で、はじめて心の底から触れ合っていく。
これらは、まんま本作に至るファブローの映画人生に当てはまろう。(あえて対象となる作品タイトルは記さないが…)
もちろん、放たれるメッセージは映画業界だけでなく、どこの世界にも当てはまる。
本作はそうしたテーマを軽妙なコメディ・タッチのロード・ムービーとして、人生哲学あり、家族愛あり、下ネタあり、ヨダレ流れる美食紹介あり、ご機嫌なラテン音楽あり、と盛りだくさんのエンターテインメントとして紡いでいく。皆、思わず笑顔になる肩肘の張らない、まさに満腹映画である。
また、もうひとつの提言として、様々な価値観の融合が挙げられよう。一流シェフとファストフードの組み合わせから、フードトラックでアメリカ横断をし、キューバ移民がアメリカに広めたサンドイッチに各地域の庶民料理とコラボしていくプロセスもさることながら、痛い眼にあったSNSを現代病と眼の仇にすることなく宣伝に有効活用、アナログと最新技術がきちんと手をとり合う道を示す。果ては遺恨を残した批評家との関わり合い、要するに作品と評論の相互作用もフォロー。映画人としての媚というより、ここは誠実さととろうではないか。
総じて前向きに転じる点が、実に清々しい。
役者陣もファブローの人徳なのだろう、ダスティン・ホフマンからスカーレット・ヨハンソンの贅沢な起用、ロバート・ダウニー・Jr.の特別出演等、超豪華だ。
テンポよく終盤までなだれこみ、すわ傑作かと予感していたのだが、ラストに少々難がある。最後にもう一捻り、山場、起伏があった方がよかったのではないか。個人的には、てっきり批評家との決戦で盛り上げると思っていたのだが…。なんとなくハッピーなまま、尻すぼみにフェイドアウトしてしまった感じである。
う~ん、ここはきちんとエンターテインメントの構成をとってほしかった。
それにしてもジョン・ファブロー、本作のような作品を放った後は何を撮るのだろう。動向に注目したい。
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