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Channel: 相木悟の映画評
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『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』 (2015)

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仮面ライダーの歴史の重みを感じる特別編!ではあるのだが…?!



歴史に埋もれしヒーローの復権と、マシンを駆る仮面ライダー同士の最速を決するレーシングバトルという二度美味しい好企画ではあるのだが…。
ファンの批判を浴びながらも出がらしのように続けている春の“ヒーロー大戦シリーズ”。今回ピックアップされたのが、シリーズ第1作『仮面ライダー』の新キャラとして考案され、児童書に登場するも出番がないまま番組は終了、装いも新たに『仮面ライダーV3』がはじまったために幻の存在となった“仮面ライダー3号”だ。次から次へと知られざるネタが出てくる仮面ライダー史の凄みを感じずにはいられない。
また、車に乗る掟破りの現役シリーズ『仮面ライダードライブ』に合わせて、同じく専用車ライドロンを使う『仮面ライダーBLACK RX』が取り上げられるとなると、黙ってはいられない。『BLACK』及び続編の『RX』は、個人的にリアルタイムで熱中した思い入れの深いライダーである。離れ小島のごとく時代が孤立しているゆえ、『仮面ライダーSPIRITS』でも取り上げられない等、不遇な扱いを受けている当2作。こうして陽の目が当たっただけでも嬉しさがこみ上がるが、はたして如何なる内容に…!?

1973年2月10日。仮面ライダー1号&2号の活躍により、秘密結社ショッカーは壊滅。世界に平和が訪れたかにみえた矢先、謎の戦士、仮面ライダー3号が出現。1号と2号は、3号の前に敗れ去り、以降の歴史は改変されてしまう。
2015年。ショッカーが統治する世界で、仮面ライダードライブこと泊進ノ介(竹内涼真)はショッカーの一員として、歯向かう仮面ライダーに敵意を燃やしていた。しかし、ショッカーに反旗を翻す仮面ライダーBLACKこと南光太郎(倉田てつを)の正義の雄叫びを聞き、さらに子供を盾にするショッカーの卑劣さを目の当たりにし、世界の在り方に疑念を抱くようになる。そしてそんな進ノ介の前に、仮面ライダー3号こと黒井響一郎(及川光博)が立ちはだかって…。

OPから第1作『仮面ライダー』の最終回がそのまま映し出され、3号登場に繋がる流れにグッときた。(音声は新規アフレコ)
でも、すぐに「まてよ?!」と疑問がよぎる。コレって、未見の人の興を削ぐのでは?ネタバレにも程があろう。不運にも最終回を先に見せられたちびっ子ファンが不憫でならない。もう初っ端から躓いた按配である。

ストーリーはパラレル・ワールドを舞台に、正規の時間軸の記憶を残す霧子(内田理央)を入口にして、改変された中で正義に目覚めていくライダーたちの奮闘を綴っていく。
そんな中、メインとなる仮面ライダー3号は、悪なのか正義なのか?真意はどこにあるのか?謎が謎を呼び、真相は二転三転。彼を巡るドラマは、なかなかの観応えであった。存在意義に迷う姿は、期せずして歴史の闇に葬られた現実の3号がダブり、切ないのなんの。世の中には、こうした忘れられた存在が山のようにあろう。
演じるミッチーも役に敬意をはらい、愛情たっぷりに妙演。ライダーには欠かせない哀愁を自覚している等、好感度は高い。

自慢のマシンを持ち寄る平成ライダーの世紀のレースといった、ありそうでなかったシチュエーションも単純に楽しかった。『ベン・ハー』(59)よろしく、容赦ない殲滅戦を繰り広げながら勝敗を決する進行に、ちゃんと3号の信念が乗っていたのもGOOD。
惜しむらくは、そうするならば、もっとマシンを主体にした物語性がほしかった。仮面ライダーはマシンあってこそであり、車をパートナーにする『ドライブ』が物議を醸しただけに、テーマの掘り下げようがあったように思う。

他、何といっても今回の目玉は上記したごとく、仮面ライダーBLACK&RXこと南光太郎だ。オリジナルキャストの倉田てつをが衰えぬ熱演を見せ、氏の力強いセリフと皮手袋に心底しびれた。氏はヒーロー役者としてまだまだイケる!
大人の事情でNGだったのかもしれないが、願わくば当シリーズのBGMを流してほしかった。そうすれば鳥肌モノで、点数大幅UPだったものを…。

かように見どころはそこそこあるのだが、如何せん本劇場版シリーズのセコさは相も変わらず。お祭りの有難味なんぞ、もはや求めるべくもない。
久しぶりの仮面ライダーゼロノスこと桜井侑斗(中村優一)の勇姿、期待通りのダメキャラぶりをみせる仮面ライダーギャレンこと橘さん(天野浩成)、衰えぬビジュアルに驚く仮面ライダーファイズこと乾巧(半田健人)といった、スケジュールの合う人を集めました的な寄せ集めメンバー然り。(声だけだが『仮面ライダーブレイド』一派の勢揃いや、原作準拠の立花藤兵衛(井出らっきょ)、異様な存在感があるブラック将軍(高田延彦)、クライマックスに降臨するライダー○○のケレン味、と悪くない点もあるのだが…)
超強引な『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の入れ込み、配信ドラマ『仮面ライダー4号』の促販である尻切れのラストと、「如何なものか?」という作劇も目に付く。

いわんや、脚本の突っ込みどころの多さはいつもの通りなのだが…。
TSUTAYAで特集レンタルされ、にわかに再評価の気運が高まっている東映プログラムピクチャーを改めて観るに、正式に当社の伝統を継いでいるのは仮面ライダーシリーズである旨を痛感する。映画産業が衰退し、食いつめたスタッフたちが『仮面ライダー』畑に流入したのは紛れもない史実であり、そのまま作劇術を踏襲しているのである。時代劇のスターシステム、要するにスターを魅せることのみに終始し、整合性は度外視。とにかく見せ場の連続で観客を楽しませるサービス精神。ヒットすれば、スピンオフを乱発し、飽きられるまでとことんコンテンツを吸い尽くす貪欲さ。こうした黄金時代の東映京都のノウハウを、『仮面ライダー』シリーズは現代に体現していることがお分かりになろう。
一般の観客はまだしも、少なくとも論者はこの点を今一度見つめ直してもいいのではないかと、僕は最近思いはじめている。
これもまた歴史の継承。奇しくも本作のテーマと同じである。


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