Quantcast
Channel: 相木悟の映画評
Viewing all articles
Browse latest Browse all 113

『トランスフォーマー/ロストエイジ』 (2014)

$
0
0
問答無用、スーパーアトラクションを体感せよ!



165分(!)の上映時間、くまなくバカ騒ぎできる一大エンターテインメントではあった。というか、それだけであった。
本作は、日本製おもちゃをもとにつくられたハリウッド製アクション『トランスフォーマー』シリーズの第4弾。一応前3作を区切りとし、キャストは一新され新章開幕となるも、我らがマイケル・ベイはもちろん続投。シリーズを重ねる毎にスケールが大きくなり、内容なんて頭に入ってこないほど、とにかく画の迫力で押しまくるのが本シリーズの醍醐味だ。3作やって、まだその上をいくテンションをもってくるのだから、監督の底知れないポテンシャルには驚かんばかり。もはやその無尽蔵なエネルギーに飲み込まれるしかあるまい。
IMAX3Dの最前列ど真ン中というポジションに陣取り、体調万全、頭を空にしてアトラクションに挑んだのだが…。

人類の存亡をかけた善悪トランスフォーマー、“オートボット”と“ディセプティコン”の決戦から4年後。トランスフォーマーを危険視した政府は、発明家ジョシュア(スタンリー・トゥッチ)をボスにそえた反トランスフォーマー組織“KSI”を立ち上げ、“オートボット”までも抹殺の対象とし、取締りの強化に勤めていた。
そんなある日、テキサスで廃品工場を営む自称、発明家のケイド(マーク・ウォールバーグ)は、安価で仕入れた中古トラックが、“オートボット”のリーダー、オプティマスプライムであることを知る。愛娘テッサ(ニコラ・ペルツ)の反対にあいながらも、深手を負ったオプティマスプライムの修理にあたるケイド。しかし、察知したKSIの襲撃に遭い、覚醒したオプティマスプライムとテッサの恋人であるレーサーのシェーン(ジャック・レイナー)の活躍により、ケイドたちはなんとか窮地を脱するのであった。そして、KSIにトランスフォーマーのバウンディ・ハンター、ロックダウンが協力している事実を知ったオプティマスプライムは、隠棲していたバンブルビーら仲間たちを収集。KSIの裏で蠢く陰謀を暴かんと立ちあがるのだが…。

一作目を観た時は、乗り物からロボットへ変わるトランスフォームを分子レベルで再構築するように一瞬でみせる演出に、「どこがどう収納され分解されるのか、そのプロセスが大切なのに、わかってないなぁ〜」と幻滅。かような切なる想いを無視して、シリーズを重ねる毎にどんどんスピーディーになり、トランスフォーマーは気色の悪いサイボーグと化していった。本作では喜ばしいことに変形速度は若干遅くなってビジュアル的には強化されたが、新たにロギア系能力者のように変幻自在に変形する人工のニュータイプが登場。何が起こっても信念を曲げない男、マイケル・ベイの面目躍如である。

ブロンドのナイスバディのねーちゃん、くだらないギャグの応酬(『パシフィック・リム』をライバル視?)、無駄にオシャレなカーチェイス。
前半で個性豊かに描かれた各キャラたちも、後半ではどうでもよくなってくるドラマ性のなさ。様々な陰謀が渦巻くも、結局どうでもよくなってくる構成のザツさ。それらを糾弾する思考自体を停止させる情報量の多い画造りと、押せ押せバトルの凄まじい勢い。
…と、期待を裏切らない怒涛のベイ・ワールドが展開していく。

何はともあれ、アクション・シークエンスは圧巻の一言!いま実現しうる最大のアクションといっても差支えあるまい。大火薬を投入した諸々の破壊シーン、襲来する巨大宇宙船、高所のハラハラ逃亡劇、恐竜型トランスフォーマー“ダイナボット”が参戦する熱いクライマックス等々、後半、中国へと舞台が移り、ちょっと盛りだくさんのサービス過剰なような気もするが、そこはラーメン二郎の心意気。全てに気合が入りすぎてメリハリを失うという本末転倒もご愛嬌だ。
興奮や満足より疲労感がおしよせる危険性に備え、体力勝負を挑む心積もりが必要である。
IMAX3Dカメラで撮影された驚異の映像は、それこそ高額を払ってIMAX3Dで観る価値はある。

ただ暴走しているとはいえ、米中合作映画としての配慮を怠らず、スポンサーサイドの意向を酌み、中国にきっちり媚びを売るベイの融通の良さは特筆に値しよう。わりきって金儲けとしてつくっているのかもしれないが、それをもパロディにして楽しんで造っているように見える。製作サイドにとってこれほどありがたい巨匠はいまい。

しかし、そんな能天気な本作だが、どこか腰のすわりの悪さを感じるのも確か。
まずケイドの友人ルーカス(T・J・ミラー)の死に様。これがこの手の大作ではめずらしく残酷な死を遂げ、しかもしつこく映し出す悪趣味ぶり。一体なぜこんなドン引きする真似をしたのか?
それにKSIは、CIAの高官アッティンジャー(ケルシー・グラマー)が黒幕として操っており、アメリカ政府および軍隊は蚊帳の外におき、独自に悪だくみを企んでいる。
本編から漂うこのキナ臭さは、自分たちの預かり知らない間に世の中が一変しているリアルな感覚を表現しているのではないか?
本作の世界興行成績が示すように、もはやアメリカは中心市場ではなく、いまや中国にうって変わられている。映画興行がアメリカの専売特許ではなくなっている事実を冷酷に物語るこの現実。本作の行き過ぎたゴア描写や歪な構造は、そうした潜在的な脅威に基づいているのではないか?
映画史的にも、さり気なく重要な一作であるのかもしれない。


↓本記事がお気に入りましたら、ポチッとクリックお願いいたします!
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへにほんブログ村
人気ブログランキング

Viewing all articles
Browse latest Browse all 113

Trending Articles