チームプレイで悪を討つ、型破りライダーの一成果!
●『劇場版 仮面ライダー鎧武 サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!』
決して悪くはないが、奇しくも昨今の仮面ライダー劇場版の勢いのなさを象徴する一本であった。
本作は、平成ライダーシリーズ第15作『仮面ライダー鎧武』の夏の劇場版。『鎧武』といえば、『魔法少女まどか☆マギカ』(11)の虚淵玄を脚本に招き、戦国武将、フルーツ、ストリートダンスと異素材を闇鍋の如くごちゃまぜにし、停滞した空気に新風を吹き込む意欲作と期待したのだが、蓋を開けてみれば、あら不思議。ダークなキャラ、シリアスかつ激動する展開とチャレンジ性は認めるが、個人的にはどうも表層的で真に迫ってこない内容に戸惑うばかり。色んな理由があれど、周囲に変化をもたらし、動かす主人公の魅力が弱いように思う。(『龍騎』の真司君と比べれば、明白)
それもこれもラストに向けて、「何かやってくれるはず!」と望みは残しており、本劇場版が起爆剤になってくれればと切に願っていたのだが…。
ヘルヘイムの植物とインベスに浸食された沢芽市で戦いを続ける“仮面ライダー鎧武”こと葛葉紘太(佐野岳)は、不思議な少年ラピス(田中偉登)に導かれ、異世界へと足を踏み入れる。その世界ではビートライダーズたちは、ダンスの代わりにサッカーで雌雄を決しており、死んだはずのチーム鎧武の初期リーダー裕也(崎本大海)やシド(波岡一喜)も生存していた。訳が分からないまま紘太も鎧武チームに参加し、あらゆる願いを叶えるといわれる“黄金の果実”が優勝者に与えられるオールライダー・カップに挑む羽目となる。しかしゲームの裏では、謎のアーマードライダーが暗躍し、次々に他のアーマードライダーを葬り、内紛を巻き起こす事件が発生。そして、その現場には常にラピスの影があり…。
元来、『鎧武』は一国一城の主たる戦国武将を模したアーマードライダーたちが、それぞれのダンス・グループの主として、領地(縄張り)をかけて争うチーム戦の様相を呈していた。フルーツは、それぞれのカラーを表す旗印だ。
そのコンセプトをスポーツ、ライダーキックとも合致するサッカーに重ねる狙いは分かる。理に叶っていよう。
ただ、パラレル・ワールドでこの設定となると、どうしても『映画ドラえもん』の『ミニドラ』的な添え物の印象がつきまとい、オマケでやるべき安っぽさは否めない。
それにワールドカップの盛り上がりに便乗しようとしたのだろうが、日本代表がああいう結果に終わり、急速に熱が冷めた状況下、それもまだ開催中ならまだしも、閉会した祭りのあとのタイミングで出されても場違い感が尋常ではない。最悪の状況である。同日公開の『思い出のマーニー』に客を吸い取られても仕方あるまい。
案の定、冒頭のサッカー・シーンから、あまりの寒さにげんなり。ゲストのサッカー選手も棒読みで気恥ずかしく、もともとサッカーに興味がないので「誰?」状態。スタジアムの客席もさびしく、もう少し後処理で盛るなり、どうにかならなかったのか?ゆえにライダーがサッカーをしている画ヅラの滑稽さ、おふざけ感が余計に浮き立つ悪循環である。
ところが、本格サッカー・シーンはこれだけで、てっきり各チームの試合が延々と続くと思っていた分、普通のドラマ・パートへ移り、心底ホッとした。
そして、ここからの出来が意外によく、負けても勝っても意義のあるスポーツと殺し合いを比較し、戦いのむなしさを説く構成には素直に胸をうたれた。
黒幕“仮面ライダーマルス”ことコウガネ役の歌舞伎俳優、片岡愛之助の品のあるダンディーさにもしびれまくり!悪役はこうでなくては。
鎧武がドングリやドリアンに次々にアームチェンジするシーンにも燃えた。(でもジンバーメロンにならなかったのは、減点)
クライマックスの各アーマードライダーが採石場で横並び勢揃いし、オールスターによるチームプレイも清々しい。次期ライダーの番宣もなく、興味深い本編とのリンクも垣間見え、最終的には悪くない優良な出来であった。
とはいえ、劇場版のスペシャル感があったかといえば別の話。毎年記しているような気もするが、やはり本編のTVシリーズが盛り場を迎えるこの時期の劇場版公開は苦しいのではなかろうか?結末を前にしたシリーズを、その直前に劇場版で盛り上げるのは至難の技であろう。
かつて、本編のラストを先取りしたり、未来を描いたり、はたまた過去を描いたり、あの手この手を尽くして盛大にやっていた昔がなつかしい。冬にメインの劇場版を配するよう、企画を練った方がいいのではないだろうか。(なら、1月に終わる併映の『スーパー戦隊シリーズ』に酷かといえば、性質上、大丈夫だろう)
●『烈車戦隊トッキュウジャー THE MOVIE ギャラクシーラインSOS』
25年に1度、地球に通りかかるといわれている、宇宙空間のギャラクシーラインを走るサファリレッシャー。本年、地球に近付いたサファリレッシャーは、シャドーラインの幹部ナイル伯爵(声:ヒャダイン)の襲撃を受け、バラバラになり先頭車両が地上に不時着する。サファリレッシャーの車掌レディ(福原遥)は、宇宙に戻るイマジネーション・エネルギーを得るために、トッキュウジャーのライト(志尊淳)に助力を乞うのであった。しかしそこにナイル伯爵一味が立ちはだかって…。
列車がモチーフということで、帰る場所(アイデンティティ)を探す主人公たちの旅の帰路、イマジネーションが道をつくる未来への行路、と設定とテーマ性がエモーショナルに相乗効果を上げ、大いに期待を抱かせてくれる本シリーズ。ダサさが郷愁を誘うのも一興だ。
今回も29分と短いので、ほどよくまとまった可もなく不可もないお話であるが、宇宙を走る列車というロマンティックな題材をもっと活かしてもよかったように思う。地上の戦いでギミック紹介にばかり尺が割かれ、せっかくの好設定がちょっと勿体ない。
でもまあ、ギャラクシーラインの車掌レディ役の福原遥ちゃんが可愛かったからヨシとします。
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●『劇場版 仮面ライダー鎧武 サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!』
決して悪くはないが、奇しくも昨今の仮面ライダー劇場版の勢いのなさを象徴する一本であった。
本作は、平成ライダーシリーズ第15作『仮面ライダー鎧武』の夏の劇場版。『鎧武』といえば、『魔法少女まどか☆マギカ』(11)の虚淵玄を脚本に招き、戦国武将、フルーツ、ストリートダンスと異素材を闇鍋の如くごちゃまぜにし、停滞した空気に新風を吹き込む意欲作と期待したのだが、蓋を開けてみれば、あら不思議。ダークなキャラ、シリアスかつ激動する展開とチャレンジ性は認めるが、個人的にはどうも表層的で真に迫ってこない内容に戸惑うばかり。色んな理由があれど、周囲に変化をもたらし、動かす主人公の魅力が弱いように思う。(『龍騎』の真司君と比べれば、明白)
それもこれもラストに向けて、「何かやってくれるはず!」と望みは残しており、本劇場版が起爆剤になってくれればと切に願っていたのだが…。
ヘルヘイムの植物とインベスに浸食された沢芽市で戦いを続ける“仮面ライダー鎧武”こと葛葉紘太(佐野岳)は、不思議な少年ラピス(田中偉登)に導かれ、異世界へと足を踏み入れる。その世界ではビートライダーズたちは、ダンスの代わりにサッカーで雌雄を決しており、死んだはずのチーム鎧武の初期リーダー裕也(崎本大海)やシド(波岡一喜)も生存していた。訳が分からないまま紘太も鎧武チームに参加し、あらゆる願いを叶えるといわれる“黄金の果実”が優勝者に与えられるオールライダー・カップに挑む羽目となる。しかしゲームの裏では、謎のアーマードライダーが暗躍し、次々に他のアーマードライダーを葬り、内紛を巻き起こす事件が発生。そして、その現場には常にラピスの影があり…。
元来、『鎧武』は一国一城の主たる戦国武将を模したアーマードライダーたちが、それぞれのダンス・グループの主として、領地(縄張り)をかけて争うチーム戦の様相を呈していた。フルーツは、それぞれのカラーを表す旗印だ。
そのコンセプトをスポーツ、ライダーキックとも合致するサッカーに重ねる狙いは分かる。理に叶っていよう。
ただ、パラレル・ワールドでこの設定となると、どうしても『映画ドラえもん』の『ミニドラ』的な添え物の印象がつきまとい、オマケでやるべき安っぽさは否めない。
それにワールドカップの盛り上がりに便乗しようとしたのだろうが、日本代表がああいう結果に終わり、急速に熱が冷めた状況下、それもまだ開催中ならまだしも、閉会した祭りのあとのタイミングで出されても場違い感が尋常ではない。最悪の状況である。同日公開の『思い出のマーニー』に客を吸い取られても仕方あるまい。
案の定、冒頭のサッカー・シーンから、あまりの寒さにげんなり。ゲストのサッカー選手も棒読みで気恥ずかしく、もともとサッカーに興味がないので「誰?」状態。スタジアムの客席もさびしく、もう少し後処理で盛るなり、どうにかならなかったのか?ゆえにライダーがサッカーをしている画ヅラの滑稽さ、おふざけ感が余計に浮き立つ悪循環である。
ところが、本格サッカー・シーンはこれだけで、てっきり各チームの試合が延々と続くと思っていた分、普通のドラマ・パートへ移り、心底ホッとした。
そして、ここからの出来が意外によく、負けても勝っても意義のあるスポーツと殺し合いを比較し、戦いのむなしさを説く構成には素直に胸をうたれた。
黒幕“仮面ライダーマルス”ことコウガネ役の歌舞伎俳優、片岡愛之助の品のあるダンディーさにもしびれまくり!悪役はこうでなくては。
鎧武がドングリやドリアンに次々にアームチェンジするシーンにも燃えた。(でもジンバーメロンにならなかったのは、減点)
クライマックスの各アーマードライダーが採石場で横並び勢揃いし、オールスターによるチームプレイも清々しい。次期ライダーの番宣もなく、興味深い本編とのリンクも垣間見え、最終的には悪くない優良な出来であった。
とはいえ、劇場版のスペシャル感があったかといえば別の話。毎年記しているような気もするが、やはり本編のTVシリーズが盛り場を迎えるこの時期の劇場版公開は苦しいのではなかろうか?結末を前にしたシリーズを、その直前に劇場版で盛り上げるのは至難の技であろう。
かつて、本編のラストを先取りしたり、未来を描いたり、はたまた過去を描いたり、あの手この手を尽くして盛大にやっていた昔がなつかしい。冬にメインの劇場版を配するよう、企画を練った方がいいのではないだろうか。(なら、1月に終わる併映の『スーパー戦隊シリーズ』に酷かといえば、性質上、大丈夫だろう)
●『烈車戦隊トッキュウジャー THE MOVIE ギャラクシーラインSOS』
25年に1度、地球に通りかかるといわれている、宇宙空間のギャラクシーラインを走るサファリレッシャー。本年、地球に近付いたサファリレッシャーは、シャドーラインの幹部ナイル伯爵(声:ヒャダイン)の襲撃を受け、バラバラになり先頭車両が地上に不時着する。サファリレッシャーの車掌レディ(福原遥)は、宇宙に戻るイマジネーション・エネルギーを得るために、トッキュウジャーのライト(志尊淳)に助力を乞うのであった。しかしそこにナイル伯爵一味が立ちはだかって…。
列車がモチーフということで、帰る場所(アイデンティティ)を探す主人公たちの旅の帰路、イマジネーションが道をつくる未来への行路、と設定とテーマ性がエモーショナルに相乗効果を上げ、大いに期待を抱かせてくれる本シリーズ。ダサさが郷愁を誘うのも一興だ。
今回も29分と短いので、ほどよくまとまった可もなく不可もないお話であるが、宇宙を走る列車というロマンティックな題材をもっと活かしてもよかったように思う。地上の戦いでギミック紹介にばかり尺が割かれ、せっかくの好設定がちょっと勿体ない。
でもまあ、ギャラクシーラインの車掌レディ役の福原遥ちゃんが可愛かったからヨシとします。
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