爆走せし、ロック魂ムービー!
なにがなんだか分からないうちに、思わず心が熱くなる痛快作であった。
本作は、『週刊ヤングジャンプ』で連載中の同名漫画の映画化。『SR サイタマノラッパー』(09)で注目を浴びて以来、破竹の勢いをみせる入江悠監督作だ。原作は未読。ただ内容をみると、パッとしないダメ男のロック魂を描いた題材は監督にピッタリ。
また、急進撃をみせる若手女優の筆頭、二階堂ふみの主演デビューとなったのが、同監督の『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)。
メジャーへの活路を開かんとする入江監督と今や売れっ子となった二階堂ふみが、今このタイミングで再びタッグを組んで送り出したものとは?興味津々で劇場へ向かったのだが…!?
勉強もスポーツもできず、女の子にも縁のない、いじめられっ子の高校生、日々沼拓郎(野村周平)は、ロックへの愛だけは人一倍。仲間の草壁(前野朋哉)と依田(岡本啓佑)と共にバンド“ザ・ロックンロールブラザーズ”を結成し、卒業後、一発当てるべく上京する。しかし現実は甘くなく、伝説のライブハウス“モンスターGOGO”に住み込み、オーナー(竹中直人)にこき使われつつ、数人の客の前でステージにたつドン底生活を送っていた。そんなある日、拓郎たちのライヴに酔っぱらった若い女が乱入し、マイクを奪って熱唱。観客の心を鷲掴みにしてしまう。その女の正体は、オーナーの姪っ子の超人気アイドル、宇田川咲(二階堂ふみ)であった。咲は拓郎たちを散々罵倒するも、後日、私のために曲を書いてくれと拓郎に頭を下げてきて…。
僕は音楽に疎いので、とりあえずロックの概念だけでも頭に入れておこうと、文明の利器インターネットを駆使して調べてみるも、いまいちつかめず。歴史を辿っても、ほとんど聴いたことのない曲で、全くつかめず。でも、その“つかめなさ”がロックなのではないかと、無理から結論づけてみる。要するに、何にも迎合しない自由な自己表現とでもいおうか。いや、でもそれだと、「これがロックだ!」という発言は、“ロック”という枠にはまっているのではないか…?と、無間地獄に陥ったのだが…。
しかし、かような訳のわからなさも全部ひっくるめてロックだとしたら、なるほど、本作の主人公、拓郎君は当てはまる。
原作でどうなっているのか知らないが、なんせ劇中の拓郎は、終始オドオドしているばかりで、観ていてイライラするぐらいまともに言葉をしゃべらない。全てをライヴで吐き出している按配だ。
とはいえ、正直、肝心の詞も聴きとりにくく、頭に入ってはこない(笑)。でも、ギャーギャー喚く彼のいわんとする感情だけは伝わってくる。それが本作の醍醐味なのであろう。
物語は至ってシンプル。底辺でくすぶっている冴えない拓郎たちのトホホな日常が、カリスマ・アイドルの咲と出会うことで変化していく。咲は人気絶頂ながら、本当にやりたい音楽が出来ず、自分が虚像であることを受け入れている。しかも夢を叶えるのは、物理的に不可能な宿命をも背負っている。自然、彼女は、誰にも見向きもされない境遇ではあれ、とにかくやりたいことを全力でやっている拓郎たちに憧れを抱く。そんな拓郎たちは、彼女の意気に応えて一念発起する。
『かまってちゃん』同様、赤面するような超ベタな展開であるが、それでもシンプルであるがゆえにライヴ・シーンには感情が乗りまくる。ラストの暴風雨の中の、入魂のライヴ・シーンは圧巻だ。想いが炸裂して溢れ出る、まさに泣き笑いの極致。落ち込んでいる時に観ると、元気をもらえることうけあいである。
全裸パフォーマンスを厭わず、ハイテンションで拓郎役を演じきった野村周平君も絶賛に値するが、やはり特筆すべきは宇田川咲を演じた二階堂ふみ。ゲロを吐き、罵詈雑言を浴びせる凶暴さも中身のピュアさも、総じて“めちゃカワ”。この観る者を引き込む活きのよさを観れば、数多の監督たちに引く手あまたになるのも当然といえよう。
また彼女のキャラも、本人が少し重なって見えるのも面白い。有名になって新鮮味が削がれ、勢いを失っていく現状。周囲の高評価の中で、自分のやりたいことを見つめる姿に迫真性を感じよう。
それは入江監督にもいえ、ハッキリいって、氏がくすぶっている時代に本作をつくった方がもっと名作になったと思う。技術も金もないが、情熱だけはほとばしり突き進む、といったテーマ性がもっとストレートに爆発したに違いない。
今やキャリアを積んでレベルアップし、大作も手掛ける巨匠へとのし上がりつつある監督は、あえて本作ではそれらをブチ壊して、メチャクチャやろうとしている感じがする。やり過ぎともとれるバイオレンス描写やナンセンス・ギャグ、整合性をガン無視した展開といった破天荒さは、ハングリーな初心に戻ろうとする監督の焦燥がこもっているのだろう。
その心意気は買いたい。
日本映画界を背負って立つ二人の再タッグ作品として、後々、歴史的に意義のある作品となるのではなかろうか。
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なにがなんだか分からないうちに、思わず心が熱くなる痛快作であった。
本作は、『週刊ヤングジャンプ』で連載中の同名漫画の映画化。『SR サイタマノラッパー』(09)で注目を浴びて以来、破竹の勢いをみせる入江悠監督作だ。原作は未読。ただ内容をみると、パッとしないダメ男のロック魂を描いた題材は監督にピッタリ。
また、急進撃をみせる若手女優の筆頭、二階堂ふみの主演デビューとなったのが、同監督の『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)。
メジャーへの活路を開かんとする入江監督と今や売れっ子となった二階堂ふみが、今このタイミングで再びタッグを組んで送り出したものとは?興味津々で劇場へ向かったのだが…!?
勉強もスポーツもできず、女の子にも縁のない、いじめられっ子の高校生、日々沼拓郎(野村周平)は、ロックへの愛だけは人一倍。仲間の草壁(前野朋哉)と依田(岡本啓佑)と共にバンド“ザ・ロックンロールブラザーズ”を結成し、卒業後、一発当てるべく上京する。しかし現実は甘くなく、伝説のライブハウス“モンスターGOGO”に住み込み、オーナー(竹中直人)にこき使われつつ、数人の客の前でステージにたつドン底生活を送っていた。そんなある日、拓郎たちのライヴに酔っぱらった若い女が乱入し、マイクを奪って熱唱。観客の心を鷲掴みにしてしまう。その女の正体は、オーナーの姪っ子の超人気アイドル、宇田川咲(二階堂ふみ)であった。咲は拓郎たちを散々罵倒するも、後日、私のために曲を書いてくれと拓郎に頭を下げてきて…。
僕は音楽に疎いので、とりあえずロックの概念だけでも頭に入れておこうと、文明の利器インターネットを駆使して調べてみるも、いまいちつかめず。歴史を辿っても、ほとんど聴いたことのない曲で、全くつかめず。でも、その“つかめなさ”がロックなのではないかと、無理から結論づけてみる。要するに、何にも迎合しない自由な自己表現とでもいおうか。いや、でもそれだと、「これがロックだ!」という発言は、“ロック”という枠にはまっているのではないか…?と、無間地獄に陥ったのだが…。
しかし、かような訳のわからなさも全部ひっくるめてロックだとしたら、なるほど、本作の主人公、拓郎君は当てはまる。
原作でどうなっているのか知らないが、なんせ劇中の拓郎は、終始オドオドしているばかりで、観ていてイライラするぐらいまともに言葉をしゃべらない。全てをライヴで吐き出している按配だ。
とはいえ、正直、肝心の詞も聴きとりにくく、頭に入ってはこない(笑)。でも、ギャーギャー喚く彼のいわんとする感情だけは伝わってくる。それが本作の醍醐味なのであろう。
物語は至ってシンプル。底辺でくすぶっている冴えない拓郎たちのトホホな日常が、カリスマ・アイドルの咲と出会うことで変化していく。咲は人気絶頂ながら、本当にやりたい音楽が出来ず、自分が虚像であることを受け入れている。しかも夢を叶えるのは、物理的に不可能な宿命をも背負っている。自然、彼女は、誰にも見向きもされない境遇ではあれ、とにかくやりたいことを全力でやっている拓郎たちに憧れを抱く。そんな拓郎たちは、彼女の意気に応えて一念発起する。
『かまってちゃん』同様、赤面するような超ベタな展開であるが、それでもシンプルであるがゆえにライヴ・シーンには感情が乗りまくる。ラストの暴風雨の中の、入魂のライヴ・シーンは圧巻だ。想いが炸裂して溢れ出る、まさに泣き笑いの極致。落ち込んでいる時に観ると、元気をもらえることうけあいである。
全裸パフォーマンスを厭わず、ハイテンションで拓郎役を演じきった野村周平君も絶賛に値するが、やはり特筆すべきは宇田川咲を演じた二階堂ふみ。ゲロを吐き、罵詈雑言を浴びせる凶暴さも中身のピュアさも、総じて“めちゃカワ”。この観る者を引き込む活きのよさを観れば、数多の監督たちに引く手あまたになるのも当然といえよう。
また彼女のキャラも、本人が少し重なって見えるのも面白い。有名になって新鮮味が削がれ、勢いを失っていく現状。周囲の高評価の中で、自分のやりたいことを見つめる姿に迫真性を感じよう。
それは入江監督にもいえ、ハッキリいって、氏がくすぶっている時代に本作をつくった方がもっと名作になったと思う。技術も金もないが、情熱だけはほとばしり突き進む、といったテーマ性がもっとストレートに爆発したに違いない。
今やキャリアを積んでレベルアップし、大作も手掛ける巨匠へとのし上がりつつある監督は、あえて本作ではそれらをブチ壊して、メチャクチャやろうとしている感じがする。やり過ぎともとれるバイオレンス描写やナンセンス・ギャグ、整合性をガン無視した展開といった破天荒さは、ハングリーな初心に戻ろうとする監督の焦燥がこもっているのだろう。
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日本映画界を背負って立つ二人の再タッグ作品として、後々、歴史的に意義のある作品となるのではなかろうか。
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