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『シン・シティ 復讐の女神』 (2014)

カルトな魅力がほとばしる、コミック・バイオレンス第2弾!

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相当チャレンジングな作劇を試みながら不思議と後味は軽い、独特のノリを味わえる期待通りの第2弾ではあるのだが…!?
7000ドルで撮ったインディーズ映画『エル・マリアッチ』(92)で衝撃デビューをはたしてこの方、独自の世界観を貫いている監督ロバート・ロドリゲス。メジャーに成り上がってもなお、監督、脚本、撮影、音楽、編集と映画製作の全てを支配下におくスタイルは変化ナシ。技術の進歩でグリーンバックを駆使し、さらにその傾向を極め、低予算でメジャー作品を生み出しているのだから見上げた人物である。
そして、それらのノウハウが結実したのが、フランク・ミラーのグラフィック・ノベルを当人と共同監督した『シン・シティ』(05)だ。本作は、9年ぶりの続編となる。長い年月を経て、カルトな人気を誇る当作がどう甦ったのか!?期待してスクリーンに向かったのだが…。

暴力と欲望が渦巻く無法都市シン・シティ。その中のストリップバー“ケイティ”には、巨漢の暴漢マーヴ(ミッキー・ローク)や、私立探偵のドワイト(ジョシュ・ブローリン)、町を牛耳る上院議員ロアーク(パワーズ・ブース)といった面々が日夜集い、血なまぐさい夜の一時を過ごしていた。
時にドワイトは、かつて自分を裏切った元恋人エヴァ(エヴァ・グリーン)に翻弄されて罠にはまり、ある夜の“ケイティ”には若いギャンブラー、ジョニー(ジョセフ・ゴードン=レヴィッド)が流れ着き、ロアークにポーカー勝負を挑む。そして“ケイティ”のNO.1ストリップダンサーのナンシー(ジェシカ・アルバ)は、自分を見守り、ロアークに殺された刑事ハーティガン(ブルース・ウィリス)の仇を討つべく、日夜、復讐の炎をたぎらせており…。

構成は前作と同じく、オムニバス形式。原作のエピソード2編と映画用に新たに書き下ろされた2編は、例のごとく時間軸もバラバラであり、前作の後日譚でもあり、前日譚でもある。本作だけ観ても問題はない内容になってはいるが、前作の知識がった方がより深く楽しめよう。

冒頭に記したように、シリーズの醍醐味は健在。グラフィック・ノベルをそのまま現実の役者で動かしたような映像のケレン味は、格段にパワーアップしている。ほぼモノクロのシャープな色彩の中、ハードなバイオレンスが繰り広げられ、吐き気を催すような下衆がうごめく犯罪絵巻が紡がれるも、それほど後には残らないのも漫画の特質を上手く再現しているがゆえであろう。
グリーンバックで完全構築した世界で、それらを違和感なくみせきる演出術は、スゴイとしかいいようがない。間違いなく本シリーズだからこそ味わえる妙味である。

豪華役者陣も異世界の住人を存在感たっぷりに大好演。9年ぶりの続編ということで、お亡くなりになっていたり、家庭の事情があったりと全員続投とはいかなかったが、多くは前作に引き続き元気な顔を見せている。
低迷から復活の兆しとなった当たり役、心優しき野獣マーヴを、再び特殊メイクで豪快に演じたミッキー・ローク。相変わらずキュートではあるが、ストリップダンサー役なのに脱ぎ惜しみして迫力を逸しているナンシー役のジェシカ・アルバ。顔見せ程度ながらいいトコをさらうナンシーの守護天使ハーティガン役のブルース・ウィリス。悪徳政治家ロアーク役のパワーズ・ブース。娼婦街の女王ゲイル役のロザリオ・ドーソン。等々、そんな前作組が幅を利かす中、新加入組では魔性の女エヴァに扮したエヴァ・グリーンが群を抜いて妖艶なインパクトを刻んでいる。全編ほぼ裸で、眼はスクリーンに釘付けだ。
ドワイト役のジョシュ・ブローリンをはじめ、マヌート役のデニス・ヘイスバート、殺人兵器ミホ役のジェイミー・チャンと配役チェンジ組も違和感ナシ。
他、クリストファー・ロイドや歌姫レディー・ガガまで顔出しする贅沢ぶりだ。
いうまでもなく、トンデモ世界に説得力をもたせるのに、これらノリノリの役者陣の力も甚大である。

…と、映像と役者に関しては申し分ないのだが、如何せんストーリーに難がある。今回は“復讐”をキーワードに各ドラマが語られる訳であるが、すべからくワンパターンで、痛めつけられて車から放り出され、喧嘩沙汰に首を突っ込むマーヴを伴って敵地に殴り込む、というパターンの繰り返しである。あまりに芸がない。これを様式美といわれれば、そうかもしれないが、この中身のなさは如何なものか。

あと好みの問題ではあるが、前作を含めて本シリーズにいまいちノレないのは、モノローグを多用する語り口である。おそらくグラフィック・ノベルを意識してなのだろうが、どうしても客観的になり、作中に気持ちが入っていけないのだ。
やはり映画は、画で勝負して欲しいもの。モノローグをバッサリきって、画だけで押す形になっていれば、好きなジャンルであるだけに前作共々フェイバリットになっていたかもしれない。

そんな中、キラリと光ったのが、ジョセフ・ゴードン=レヴィッド扮するギャンブラーのジョニーを主役にしたエピソード。このハードボイルドさに、グッと心をつかまれた。特にラストの男の面子をかけた格好良さよ。このパートだけで一本の映画にしてもよかったように思う。
ジョセフ・ゴードン=レヴィッドにハズレなし、だ。


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