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Channel: 相木悟の映画評
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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』 (2014)

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痛快なり、ならず者スペース・アドベンチャー!



最新技術を駆使したスペースオペラであるのは間違いないものの、どこか昔懐かしいノスタルジックな娯楽作であった。
本作は、マーベル・スタジオが抱えるご存じ『アベンジャーズ』プロジェクトの新勢力。あれだけ人気が定まったヒーロー・ラインナップの中に、途中から参入するにはよほどのインパクトが必要であるが、そこで当スタジオとった手は最強の変化球。知名度の低い原作にスター不在、トロマ出身のカルト監督ジェームズ・ガンに180億の製作費を託し、トリッキーなヒーローものにチャレンジしたのだから何をかいわんや。(このような事例、日本では到底考えられまい。仮に監督の人選にしくじっても、建て直す体制が確立されてはいるのだろうが…)
そしてその目論見は的を射て、史上稀にみる特大ヒットを飛ばしてしまうのだから、マーベルの企画力恐るべし、である。

1988年アメリカ、ミズーリ州。9歳の少年ピーターは、母親を病で亡くした直後、飛来した宇宙船に連れ去られてしまう。
20年後。ピーター(クリス・プラット)は、“スター・ロード”と名乗り、トレジャー・ハンターとして宇宙を飛び回っていた。そんなある日、ピーターは惑星モラグの廃墟で謎の球体オーブを盗掘。しかしそれは銀河を滅亡させるほどの力をもち、宇宙の裏社会を支配せし“闇の存在”が探し求めるパワーストーンであった。案の定、オーブを換金しようとザンダー星のブローカーを訪ねたピーターは、女暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)に襲われ、おまけに遺伝子改造されたアライグマのロケット(声:ブラッドリー・クーパー)と樹木型ヒューマノイドのグルート(声:ヴィン・ディーゼル)の賞金稼ぎコンビにも目をつけられ、大乱闘。結局、4人まとめて警察のお縄になり、凶悪犯だけが収監される宇宙に浮かぶ刑務所へ入れられる。そして所内にはガモーラを囲っているテロリスト、ロナン(リー・ペイス)に怨みをもつ怪力の超人ドラックス(デイヴ・バウティスタ)も囚われており、なりゆき上、5人は手を組んで脱走を企てる運びとなり…。

もう予告編からしてそのキャッチーさに胸躍るのだが、中でも常々話題となっていたのが、ランナウェイズからジャクソン5まで70年代のヒット曲をズラッと並べたサウンドトラックである。
冒頭、9歳のピーターはソニーのウォークマンを持ったまま宇宙人に誘拐され、その中には母親がヒット曲を編集したカセットテープが入っていた。(←これがそのままサウンドトラック『Awesome Mix Vol.1』として発売され、大ヒット!)母の形見として、地球への郷愁として、ウォークマンとカセットを肌身離さず持ち、曲を聴いているピーター。
あれだけ繰り返し聴いていたらテープが擦り切れるのでは?ウォークマンも壊れるのでは?(経験上、すぐ壊れるイメージがある)等々、疑問がわくが、そこは自前のラジカセを作っていたことからも、宇宙のテクノロジーで修理しているのだろう。
本作では、それら懐メロが時にBGMとして、ここぞのタイミングで流れる仕掛けとなっている。正直、知っている曲がほとんどなくてピンとこなかったが、ドンピシャ世代のオールド・ファンはいちいち歓喜感激するに違いない。いわば、世代でなくともサントラを予習してから向かうと楽しさ倍増という訳である。

ストーリー自体は他愛ないが、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15)へ布石がある分、最凶最悪のスーパー・ヴィランのサノス(声:ジョシュ・ブローリン)、その配下で本作の事実上の敵役ロナン一味、パワーストーンを収集している謎の男コレクター(ベネチオ・デル・トロ)、ザンダー星の警察組織ノヴァ(指揮官がグレン・クロースで、隊員にジョン・C・ライリー)、ピーターが所属するヨンドゥ(マイケル・ルーカー)をリーダーに冠する盗賊組織“ラヴァジャーズ”と、様々な勢力が入り乱れ、無駄に複雑化。関係図を頭に入れておいた方が、幾分わかり易かろう。
かような大組織の間をお尋ね者の主人公たちが渡り歩き、あまつさえ“ガーディアンズ・ギャラクシー(銀河の守護者)”として救世主へと祀り上げられる痛快さが、本作の妙である。

何をおいても5人のキャラが最高に立っている。
まず主人公ピーターに色のついていないクリス・プラットを配したのが、大正解。異星人が並ぶ中、人間ということだけで目立っている分、余計なスター性はいらないのだ。いい加減なプレイボーイでも嫌味ない、彼の薄さのバランスが実に丁度いい。
緑色だが紅一点の女戦士ガモーラの、敵か味方か分からないピリッとした妖艶さ。
樹木型ヒューマノイドで一言しか言葉をしゃべれない優しき怪人グルート、筋肉バカのドラックスという二人の天然ぶりと凄まじい強さ。
そして、全てをもっていくアライグマのロケット!つい抱きしめたくなるほどの可愛い外見に関わらず、毒舌凶暴で武器のプロフェッショナルかつ戦術家というギャップが醸す“テッド”効果で劇中を席捲。僕も完全に彼の魅力の虜になってしまった。
おたずね者でダメ人間である彼らのおバカぶりに笑い、時にみせる友情に泣かされ、「オレたちは負け犬だ。でもやってやろうじゃないか!」と結束する光景に最大限熱くなる。彼らの一挙手一投足を眺めているだけで飽きない最強のキャラ推し映画といえよう。

それでいて、ガン監督の従来の悪趣味ぶりの隠し味もきっちり健在。常連のマイケル・ルーカーや師匠ロイド・カウフマンを義理厚く出演させ、エンドロール後のオマケまで爆笑させてくれるサービス精神やヨシ、だ。

そんな底抜けに明るいキャラたちの懐かしい味わいを醸す冒険活劇の本作は、とことんシリアス化したアメコミへのアンチテーゼとしての新鮮さもあろう。
しかし、それが妙に身近に感じるのは、全体的なノリが日本の漫画よりであるがゆえ。『ドラゴンボール』を例に出すのも芸がないが、宇宙人やしゃべる動物が混在する世界で、敵が味方になる等、多様なメンバーがチーム戦を挑む日本人のDNAに染み込んだエンタメ・スタイルが無条件に反応していることは想像に難くない。
ぶっちゃけ、よくできた筋の映画ではなく、強引さが眼につく大味な代物だが、無性に愛さずにはいられない一作なのだ。

一応は『アベンジャーズ』シリーズの一環である本作。今後はたしてガーディアンズとアベンジャーズとの接触はあるのだろうか?興味深くはあるが、彼らの独自の世界観を大事にしてほしいところではある。
とりえず早々と決まった続編での再会が待ち遠しい。


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