パワーアップせし、インドネシア産ぶっとびアクション第2弾!
続編のたしなみ方の難しさを、あらためて痛感する一作であった。
本作は、インドネシアから突如放たれ、アクション映画ファンを仰天させたウェールズ出身のギャレス・エヴァンス監督作『ザ・レイド』(12)の続編。前作は、ビル内という限定された空間で繰り広げられる、低予算ながらアイディア一杯の銃撃&肉弾戦、特に伝統武術“シラット”の体技に圧倒された。それが今回は、街中に飛び出し、複数の組織が入り乱れる抗争劇へと一大スケールアップ。ただ、そうなると前作の手作りの旨味がなくなるのでは…?という不安がよぎるのは確か。前作とは別の次元へ挑まんとする造り手の向上心を信じ、スクリーンへ臨んだのだが…!?
インドネシア、ジャカルタ。麻薬組織の根城であった高層マンションの殲滅戦を生き延びた新人SWAT隊員のラマ(イコ・ウワイス)は、その直後に警察上層部とマフィアとの癒着を調べる潜入捜査を命じられる。まずは大物マフィア、バンクン(ティオ・パクサド)の息子ウチョ(アリフィン・プトラ)が収容されている刑務所に入所。囚人との乱闘で腕前を見せつけ、ウチョの信頼を獲得する。結果、出所後にウチョの口利きでバンクンの組織の一員になることに成功するのであった。しかし今、街はゴトウ(遠藤憲一)とその息子のケンイチ(松田龍平)率いる日本ヤクザとの緊張が高まっており、自分を認めてくれない父に不満を募らせていたウチョは、新興勢力の謎の男ブジョ(アレックス・アバド)と手を組み、双方を争わす反乱を企てて…。
ストーリーは前作の2時間後からはじまる、直通の正統続編。しかし、上記したように正反対ともいえる、まるっきり異なる構成になっている。
舞台は、密室から大都市へ、香港ノワールの潜入捜査モノのサスペンスが加味され、それぞれ思惑を抱える複数組織との抗争劇という日本のヤクザ映画のエッセンスすら取り込むごちゃまぜ仕様。文字通り、監督の趣味におもいっきり走った形になっている。その手の映画が好きなファンは、ニヤリとしよう。
アクションは、期待を裏切らない『ザ・レイド』印。大幅にバリエーションが増え、刑務所や工場、クラブ、レストラン等々、狭い空間から開けた場所まで縦横無尽に工夫を凝らした超絶バイオレンスが展開する。見せ方もトリッキーになり、臨場感とケレン味も向上。相変わらず、シラットの高速絶技は、「スゲェ…」と思わず口に出るド迫力だ。果てはカーチェイスまで飛び出し、こちらもちゃんと車内のバトルと並行した驚くべきクオリティを誇っているのだから、たいしたものである。
これぞ『ザ・レイド』といった、バットを武器に暴れるベースボール・バットマン(ヴェリ・トリ・ユリスマン)、二刀流のハンマーを駆使するハンマーガール(ジュリー・エステル)、キラー・マスター(セセプ・アリフ・ラフマン)といったブジョの殺し屋たちの個性も際立ち、死闘を濃密に盛り上げる。
組長の遠藤憲一、その息子の松田龍平、右腕の北村一輝といった日本人俳優に関しては、当初は彼らがあの狂犬連中の中に入って通用するのか?と心配したが、さすがに殺陣はなし。上手にアクセントとして存在感を発揮しており、悪くはない。
それに今回、売りのリアル・ファイトだけにとどまらず、美術も凝りに凝っている点も特筆されよう。アートな色彩のこだわりからは、予算の潤沢さがひしひしと感じられる(笑)。いうまでもなく、眼に映える贅沢は、正しい予算の使い方だ。
血生臭い劇中の中、うっとりするような叙情豊かなシーンも用意され、OPのロングショットの静謐な雰囲気からして、すでに前作とは違うアプローチであることを突きつけられる。特に前回、最強の敵マッド・ドッグとして出演し、本作ではバンクンに仕える殺し屋として再登場(これも『仁義なき戦い』っぽい!)するヤヤン・ルヒアンの任侠情緒な扱いは必見。彼に対する監督の愛を感じずにはいられない。
ただ、レベルアップは認めるが、面白いかどうかと問われれば、個人的には微妙であった。
アクションを魅せるという一点突破のスタンスにおいては、やはり前作の短い時間にシンプルに圧縮した形がベストであったように思う。今回のように込み入ったクライム・ストーリーの合間に、ここだけで独立したような気合の入ったアクションが挿入され、なおかつキャラの視線がコロコロ変わって分断されると、ドラマがなかなか頭に入ってこない。前回は単純な分、感情を乗せて観れたのが、漫然と活劇を眺める羽目となる。いくら正義と悪の狭間でアイデンティティ・クライシスに陥る潜入モノという定番の強みがあっても、話に入れないとやっぱりツライ。
それでもこれが『ザ・レイド』であり、四の五のいわず、わりきってアクションを楽しむべし!といわれれば、それまでなのだが…。
次作のさらなるチャレンジに期待します。
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続編のたしなみ方の難しさを、あらためて痛感する一作であった。
本作は、インドネシアから突如放たれ、アクション映画ファンを仰天させたウェールズ出身のギャレス・エヴァンス監督作『ザ・レイド』(12)の続編。前作は、ビル内という限定された空間で繰り広げられる、低予算ながらアイディア一杯の銃撃&肉弾戦、特に伝統武術“シラット”の体技に圧倒された。それが今回は、街中に飛び出し、複数の組織が入り乱れる抗争劇へと一大スケールアップ。ただ、そうなると前作の手作りの旨味がなくなるのでは…?という不安がよぎるのは確か。前作とは別の次元へ挑まんとする造り手の向上心を信じ、スクリーンへ臨んだのだが…!?
インドネシア、ジャカルタ。麻薬組織の根城であった高層マンションの殲滅戦を生き延びた新人SWAT隊員のラマ(イコ・ウワイス)は、その直後に警察上層部とマフィアとの癒着を調べる潜入捜査を命じられる。まずは大物マフィア、バンクン(ティオ・パクサド)の息子ウチョ(アリフィン・プトラ)が収容されている刑務所に入所。囚人との乱闘で腕前を見せつけ、ウチョの信頼を獲得する。結果、出所後にウチョの口利きでバンクンの組織の一員になることに成功するのであった。しかし今、街はゴトウ(遠藤憲一)とその息子のケンイチ(松田龍平)率いる日本ヤクザとの緊張が高まっており、自分を認めてくれない父に不満を募らせていたウチョは、新興勢力の謎の男ブジョ(アレックス・アバド)と手を組み、双方を争わす反乱を企てて…。
ストーリーは前作の2時間後からはじまる、直通の正統続編。しかし、上記したように正反対ともいえる、まるっきり異なる構成になっている。
舞台は、密室から大都市へ、香港ノワールの潜入捜査モノのサスペンスが加味され、それぞれ思惑を抱える複数組織との抗争劇という日本のヤクザ映画のエッセンスすら取り込むごちゃまぜ仕様。文字通り、監督の趣味におもいっきり走った形になっている。その手の映画が好きなファンは、ニヤリとしよう。
アクションは、期待を裏切らない『ザ・レイド』印。大幅にバリエーションが増え、刑務所や工場、クラブ、レストラン等々、狭い空間から開けた場所まで縦横無尽に工夫を凝らした超絶バイオレンスが展開する。見せ方もトリッキーになり、臨場感とケレン味も向上。相変わらず、シラットの高速絶技は、「スゲェ…」と思わず口に出るド迫力だ。果てはカーチェイスまで飛び出し、こちらもちゃんと車内のバトルと並行した驚くべきクオリティを誇っているのだから、たいしたものである。
これぞ『ザ・レイド』といった、バットを武器に暴れるベースボール・バットマン(ヴェリ・トリ・ユリスマン)、二刀流のハンマーを駆使するハンマーガール(ジュリー・エステル)、キラー・マスター(セセプ・アリフ・ラフマン)といったブジョの殺し屋たちの個性も際立ち、死闘を濃密に盛り上げる。
組長の遠藤憲一、その息子の松田龍平、右腕の北村一輝といった日本人俳優に関しては、当初は彼らがあの狂犬連中の中に入って通用するのか?と心配したが、さすがに殺陣はなし。上手にアクセントとして存在感を発揮しており、悪くはない。
それに今回、売りのリアル・ファイトだけにとどまらず、美術も凝りに凝っている点も特筆されよう。アートな色彩のこだわりからは、予算の潤沢さがひしひしと感じられる(笑)。いうまでもなく、眼に映える贅沢は、正しい予算の使い方だ。
血生臭い劇中の中、うっとりするような叙情豊かなシーンも用意され、OPのロングショットの静謐な雰囲気からして、すでに前作とは違うアプローチであることを突きつけられる。特に前回、最強の敵マッド・ドッグとして出演し、本作ではバンクンに仕える殺し屋として再登場(これも『仁義なき戦い』っぽい!)するヤヤン・ルヒアンの任侠情緒な扱いは必見。彼に対する監督の愛を感じずにはいられない。
ただ、レベルアップは認めるが、面白いかどうかと問われれば、個人的には微妙であった。
アクションを魅せるという一点突破のスタンスにおいては、やはり前作の短い時間にシンプルに圧縮した形がベストであったように思う。今回のように込み入ったクライム・ストーリーの合間に、ここだけで独立したような気合の入ったアクションが挿入され、なおかつキャラの視線がコロコロ変わって分断されると、ドラマがなかなか頭に入ってこない。前回は単純な分、感情を乗せて観れたのが、漫然と活劇を眺める羽目となる。いくら正義と悪の狭間でアイデンティティ・クライシスに陥る潜入モノという定番の強みがあっても、話に入れないとやっぱりツライ。
それでもこれが『ザ・レイド』であり、四の五のいわず、わりきってアクションを楽しむべし!といわれれば、それまでなのだが…。
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