共存のテーマを深める本編付随の劇場版!
TVシリーズ本編を補完しながらも、単体として新たな奥行を与える意欲作であった。
1974年に放送され、今日に至るまで熱狂的な支持をうける不朽のアニメ『宇宙戦艦ヤマト』。しかし、長らく権利闘争でなかなか復活を果たせず、近年ようやくリメイク・ブームにのって大々的に甦るも、続編アニメ及び実写版、共に迷走。翻弄されしファンの溜飲を下げてくれたのが、13年のファースト・シリーズの本格リメイク『宇宙戦艦ヤマト2199』である。「そう、これが観たかった!」とファンに好評をもって受け入れられた当シリーズ。最終回で劇場版のアナウンスがなされた際は、てっきり順を追ってオリジナル劇場版第2作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(78)をリメイクするのかと思ったが、さにあらず。完全新作の本作では、TVシリーズをまとめた先行の劇場版『追憶の航海』に続く、24話と25話の狭間に起きた1エピソードを描くというのだからビックリである。正直、TVSPでいいのでは?とちょっぴり落胆したのだが…!?
西暦2199年。一大勢力を誇る異星国家ガミラスと交戦状態となり、大気を汚染された地球を救うべく、はるか彼方の惑星イスカンダルへ“コスモリバースシステム”を受け取りに抜錨した宇宙戦艦ヤマト。苦難の航海を経て、ガミラスを壊滅させ、イスカンダルからの帰路についたヤマトであったが、その前に戦闘民族ガトランティスの遠征隊が立ち塞がる。隊を率いる大都督“雷鳴”のダガームは、ヤマトの引き渡しを要求。ヤマトは無駄な戦闘を避け、ワープでダガームの追撃を振り切るも異空間に迷い込み、謎の惑星に辿り着く。調査のために惑星に降り立つ古代進と技術科員の桐生美影ら一行は、密林の中に戦艦、大和の残骸を発見。さらにその内部で、“七色星団の戦い”の生き残りで、復讐に燃えるガミラスのファムト・バーガー少佐とその仲間たちと遭遇し…。
冒頭。出発するヤマトを見送る側の視点、いわば、残された者のちょっとしたドラマが土方司令官と第7空間騎兵連隊員の斉藤始を通して描かれるのだが、ここが実にいい。オリジナル『ヤマト』の感傷的なノリが全開であり、一言、泣けた。反則気味ではあるが、この最初と最後のシークエンスで心をもっていかれた次第である。
本編で迎えうつ敵は、オリジナルTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2』(78~79)の悪役となる白色彗星帝国ガトランティスの遠征部隊。今回のガトランティスは、オリジナルとは毛色が違い、まさに蛮族。力こそ正義の好戦的な戦闘民族となっている。しかも、倒した相手の技術者を奴隷にしてテクノロジーを奪い、兵器のレベルは異様に高いというタチの悪さ。
TVシリーズでは、ガミラスとの知的生命体同士のリアル戦争モノの様相を呈していた分、シンプルな脳筋思想をもつ勢力として、彼らの存在は新鮮にうつった。この改変はアリ、である。
そんなガトランティスと一戦交えた末にヤマトが辿りついたのが、異空間に浮かぶ謎の惑星。そこで調査に星に降りた古代たちは、壮絶な戦死を遂げたドメルの部下バーガーと出会い、不思議なホテル空間に閉じ込められてしまう。
ここからの展開は、TVシリーズで「?」であったままの伏線の回収劇となり、謎の惑星の正体も、ファンならニヤリと唸る設定が施されている。
怨みをもつバーガーとヤマト・クルーとの間に和ができ、種の起源が明かされることで、戦争というテーマと相互理解のメッセージが、TVシリーズを総括するようにミニマムでいて大スケールに浮き彫りにされる。
総監督の出渕裕によると、これらの要素を劇場版の形で語ることは、ある程度予定していたらしく、TVシリーズの中であえて伏線を散りばめておいたという。なるほど、本編にコレを組み込めば、散漫になっていたであろう。本スタイルが一番いい形であったと納得した。いってみれば、TVシリーズと劇場版との相互理解である。
そして、クライマックスはヤマトとガミラスが連携して、ガトランティスと決戦する展開に燃えさせてくれる。知略をつくして戦う様子と、古代が艦長を暗に継承するキレのよさが心地良い。
未開の民族の暴力に連合軍が対抗するこの光景は、現実をよくよく顧みればちょっと怖いが、よくできた構造である。
個人的には、特有の幻想シークエンスが苦手なので、ヤマト・ホテルの一連は退屈したが、総じて大満足であった。
何より、全員生き残る結果が分かっているサイドストーリー、なおかつ波動砲を使えないという制約まみれで、これだけ見事な劇場版をつくり上げた製作陣の挑戦を称えたい。ヤマト同様、無謀なミッションを完遂したといえよう。
しかしながら、満を持して本格登場と相成ったガトランティス。未登場の大帝と共に、どういった敵として地球と全面抗争になっていくのか、興味は尽きない。新シリーズへの期待がかかる。早く観たいっ!
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TVシリーズ本編を補完しながらも、単体として新たな奥行を与える意欲作であった。
1974年に放送され、今日に至るまで熱狂的な支持をうける不朽のアニメ『宇宙戦艦ヤマト』。しかし、長らく権利闘争でなかなか復活を果たせず、近年ようやくリメイク・ブームにのって大々的に甦るも、続編アニメ及び実写版、共に迷走。翻弄されしファンの溜飲を下げてくれたのが、13年のファースト・シリーズの本格リメイク『宇宙戦艦ヤマト2199』である。「そう、これが観たかった!」とファンに好評をもって受け入れられた当シリーズ。最終回で劇場版のアナウンスがなされた際は、てっきり順を追ってオリジナル劇場版第2作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(78)をリメイクするのかと思ったが、さにあらず。完全新作の本作では、TVシリーズをまとめた先行の劇場版『追憶の航海』に続く、24話と25話の狭間に起きた1エピソードを描くというのだからビックリである。正直、TVSPでいいのでは?とちょっぴり落胆したのだが…!?
西暦2199年。一大勢力を誇る異星国家ガミラスと交戦状態となり、大気を汚染された地球を救うべく、はるか彼方の惑星イスカンダルへ“コスモリバースシステム”を受け取りに抜錨した宇宙戦艦ヤマト。苦難の航海を経て、ガミラスを壊滅させ、イスカンダルからの帰路についたヤマトであったが、その前に戦闘民族ガトランティスの遠征隊が立ち塞がる。隊を率いる大都督“雷鳴”のダガームは、ヤマトの引き渡しを要求。ヤマトは無駄な戦闘を避け、ワープでダガームの追撃を振り切るも異空間に迷い込み、謎の惑星に辿り着く。調査のために惑星に降り立つ古代進と技術科員の桐生美影ら一行は、密林の中に戦艦、大和の残骸を発見。さらにその内部で、“七色星団の戦い”の生き残りで、復讐に燃えるガミラスのファムト・バーガー少佐とその仲間たちと遭遇し…。
冒頭。出発するヤマトを見送る側の視点、いわば、残された者のちょっとしたドラマが土方司令官と第7空間騎兵連隊員の斉藤始を通して描かれるのだが、ここが実にいい。オリジナル『ヤマト』の感傷的なノリが全開であり、一言、泣けた。反則気味ではあるが、この最初と最後のシークエンスで心をもっていかれた次第である。
本編で迎えうつ敵は、オリジナルTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2』(78~79)の悪役となる白色彗星帝国ガトランティスの遠征部隊。今回のガトランティスは、オリジナルとは毛色が違い、まさに蛮族。力こそ正義の好戦的な戦闘民族となっている。しかも、倒した相手の技術者を奴隷にしてテクノロジーを奪い、兵器のレベルは異様に高いというタチの悪さ。
TVシリーズでは、ガミラスとの知的生命体同士のリアル戦争モノの様相を呈していた分、シンプルな脳筋思想をもつ勢力として、彼らの存在は新鮮にうつった。この改変はアリ、である。
そんなガトランティスと一戦交えた末にヤマトが辿りついたのが、異空間に浮かぶ謎の惑星。そこで調査に星に降りた古代たちは、壮絶な戦死を遂げたドメルの部下バーガーと出会い、不思議なホテル空間に閉じ込められてしまう。
ここからの展開は、TVシリーズで「?」であったままの伏線の回収劇となり、謎の惑星の正体も、ファンならニヤリと唸る設定が施されている。
怨みをもつバーガーとヤマト・クルーとの間に和ができ、種の起源が明かされることで、戦争というテーマと相互理解のメッセージが、TVシリーズを総括するようにミニマムでいて大スケールに浮き彫りにされる。
総監督の出渕裕によると、これらの要素を劇場版の形で語ることは、ある程度予定していたらしく、TVシリーズの中であえて伏線を散りばめておいたという。なるほど、本編にコレを組み込めば、散漫になっていたであろう。本スタイルが一番いい形であったと納得した。いってみれば、TVシリーズと劇場版との相互理解である。
そして、クライマックスはヤマトとガミラスが連携して、ガトランティスと決戦する展開に燃えさせてくれる。知略をつくして戦う様子と、古代が艦長を暗に継承するキレのよさが心地良い。
未開の民族の暴力に連合軍が対抗するこの光景は、現実をよくよく顧みればちょっと怖いが、よくできた構造である。
個人的には、特有の幻想シークエンスが苦手なので、ヤマト・ホテルの一連は退屈したが、総じて大満足であった。
何より、全員生き残る結果が分かっているサイドストーリー、なおかつ波動砲を使えないという制約まみれで、これだけ見事な劇場版をつくり上げた製作陣の挑戦を称えたい。ヤマト同様、無謀なミッションを完遂したといえよう。
しかしながら、満を持して本格登場と相成ったガトランティス。未登場の大帝と共に、どういった敵として地球と全面抗争になっていくのか、興味は尽きない。新シリーズへの期待がかかる。早く観たいっ!
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