名作ファンタジーの前日譚、感無量の完結編!
壮大なシリーズの幕引きと前シリーズへのブリッジという意味では、文句のない豪勢な一本ではあるのだが…。
J・R・R・トールキン著のファンタジー小説の古典の映画化として、歴史に残る傑作となった『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジー(01~03)。本作は、その前日譚を描いた童話『ホビットの冒険』の映画化3部作、堂々の完結編だ。『スターウォーズ』のエピソード1~3ほど、前シリーズから期間が離れておらず、短い原作を3部作に引き延ばした関係上、取ってつけた感が半端なく、やや盛り上がりに欠ける本シリーズ。が、そこはピーター・ジャクソン監督。技術更新した脅威の映像体験で、ファンの期待に存分に応えてくれた。何より、こうしてまた3年経ってみると、なんだかんだ言って、氏のエネルギーと愛情には素直に頭が下がる。
という訳で、偉大なるサーガの完結を見届けるべく、劇場へ馳せ参じたのだが…!?
邪竜スマウグ(声&モーションキャプチャー:ベネディクト・カンバーバッチ)が支配する王国エレボールに到着した、ホビットのビルボ(マーティン・フリーマン)とトーリン(リチャード・アーミテージ)たちドワーフ一行。かつての自分たちの王国と財宝を取り戻すべく、内部に侵入した一行は、そこでスマウグを目覚めさせてしまい、激闘の末、怒りを買ってしまう。スマウグは見せしめに湖の町へ飛び立ち、破壊の限りを尽くすのであった。そんな混乱の中、領主の子孫で弓の名手バルド(ルーク・エヴァンズ)が立ちあがり、代々受け継いできた黒い矢でスマウグの弱点を射抜き、仕留めることに成功する。
こうしてスマウグが滅び、平安が戻るも、エレボールの財宝の分配を要求するバルドたち町の人間とエルフたち、頑なに財宝を渡すことを拒むトーリンの間で不穏な空気が流れはじめる。その状況下、トーリンが血眼になって探す家宝アーケン石を密かに隠し持っていたビルボは、それを渡すことを迷う。結果、ビルボはドワーフたちのもとをこっそり抜け出し、人間とエルフにアーケン石をネタに和平をもちかけるよう提案して…。
前作から直通して、スマウグによる湖の町襲撃シーンから、本編は疾風怒涛のスタートをきる。まさにのっけからフルスロットル。凶暴なスマウグの吐き出す爆炎により、町を火の海にする迫力たるや!(膨大な人間が死んでいる割には、ゴア度は薄め)
本パートでは、バルドの決死の活躍が描かれ、スマウグと宿命の対決を果たすまでがアバンタイトルになる。
前稿から引き続きとなるが、この仕様には改めて物申しておきたい。やはり本シークエンスは、前作のクライマックスにすべきであろう。前作はバルドの物語としてまとめるべきであった。スマウグを生かして、3作目に引っ張りたかった意図は痛いほど分かる。でも、バルドの親子代々続いてきたスマウグとの因縁、屈辱に耐えてきた鬱憤を晴らす熱いプロセスが、2作に分断されてはあまり響かないのだ。これは残念。
本シリーズほどのヒット・シリーズなのだから、この辺りは興行性を度外視した構成にしてもよかったのではあるまいか。
スマウグ亡き後、それぞれの思惑で解放された王国の利権に群がる人間、エルフ、オーク、ドワーフたちが入り乱れていく。それらをつなぐ良心のビルボもまた、悪の指輪の力に魅了されている。(これが本当に児童書の内容か?と思われるほどの生々しさ)
ことほど左様に、人心の闇と光の揺らめきを大スケールかつエモーショナルに活写するのが、本シリーズの醍醐味であろう。
上記したバルドの汚名払拭のエピソードや、キーリ(エイダン・ターナー)とタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)の種族を越えた恋愛、等々、内容は盛りだくさんだが、メインはもちろんビルボとトーリンの友情である。…筈なのだが、めくるめくハードな戦闘シーンに埋もれて、いまいち盛り上がらなかった。
第一にトーリンの思考が理解できない。何らかの魔力に侵されたのだろうが、神秘性に逃げずに納得できる人間的なドラマをつくって欲しかった。
これらの不備は、もともと2部作であったのを3部作にした事情もあろうが、もったいない限りである。
とはいえ、映像の観応えは折り紙つき。IMAX3Dで観るべき重量級であり、観逃す手はあるまい。エレボールの荘厳な威容と雄大な自然といった深い映像美もさることながら、各勢力が激突する軍団乱戦は、息を飲む一大スペクタクル!1カットにどれだけ手間と金がかかっているのか、想像を絶する情報量にクラクラだ。
オークのボス格、アゾグとボルグが手強いしぶとさを見せ、各キャラクターの見せ場をつくるアクションの数々も大満腹!
(しかしながら、終始、踏んだり蹴ったりの湖の民の不憫なこと…)
相変わらず『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズへの目配せも心憎い。ガラドリアル(ケイト・ブランシェット)、サルマン(クロストファー・リー)、エルロンド(ヒューゴ・ウィーヴィング)といったお馴染みのキャラの裏活躍もばっちり用意されている。
レゴラス(オーランド・ブルーム)が、もう一人の主役とばかりに過度にピックアップされているのもご愛嬌。本シリーズから観た人は、さぞ謎の存在であろう。
ラスト。親愛の表現と共にチクリとクギをさすガンダルフ(イアン・マッケラン)の一言が胸に突き刺さる。牧歌的なホビット庄で普通の暮らしに戻るホッとした感覚と、冒険の味を知ってしまった今、かつての日常には戻れない切なさ…。
長いエンドロールに入ると、ここでもう本世界観の新作が観れないのかと急激な寂しさに見舞われた。もう一回、『ロード・オブ・ザ・リング』を観直したくなった次第である。そして、おそらくまた本シリーズが観たくなる無間ループに陥るのであろう。
冒険と指輪の魔力に魅入られたのは、観客もまた同じである。
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壮大なシリーズの幕引きと前シリーズへのブリッジという意味では、文句のない豪勢な一本ではあるのだが…。
J・R・R・トールキン著のファンタジー小説の古典の映画化として、歴史に残る傑作となった『ロード・オブ・ザ・リング』トリロジー(01~03)。本作は、その前日譚を描いた童話『ホビットの冒険』の映画化3部作、堂々の完結編だ。『スターウォーズ』のエピソード1~3ほど、前シリーズから期間が離れておらず、短い原作を3部作に引き延ばした関係上、取ってつけた感が半端なく、やや盛り上がりに欠ける本シリーズ。が、そこはピーター・ジャクソン監督。技術更新した脅威の映像体験で、ファンの期待に存分に応えてくれた。何より、こうしてまた3年経ってみると、なんだかんだ言って、氏のエネルギーと愛情には素直に頭が下がる。
という訳で、偉大なるサーガの完結を見届けるべく、劇場へ馳せ参じたのだが…!?
邪竜スマウグ(声&モーションキャプチャー:ベネディクト・カンバーバッチ)が支配する王国エレボールに到着した、ホビットのビルボ(マーティン・フリーマン)とトーリン(リチャード・アーミテージ)たちドワーフ一行。かつての自分たちの王国と財宝を取り戻すべく、内部に侵入した一行は、そこでスマウグを目覚めさせてしまい、激闘の末、怒りを買ってしまう。スマウグは見せしめに湖の町へ飛び立ち、破壊の限りを尽くすのであった。そんな混乱の中、領主の子孫で弓の名手バルド(ルーク・エヴァンズ)が立ちあがり、代々受け継いできた黒い矢でスマウグの弱点を射抜き、仕留めることに成功する。
こうしてスマウグが滅び、平安が戻るも、エレボールの財宝の分配を要求するバルドたち町の人間とエルフたち、頑なに財宝を渡すことを拒むトーリンの間で不穏な空気が流れはじめる。その状況下、トーリンが血眼になって探す家宝アーケン石を密かに隠し持っていたビルボは、それを渡すことを迷う。結果、ビルボはドワーフたちのもとをこっそり抜け出し、人間とエルフにアーケン石をネタに和平をもちかけるよう提案して…。
前作から直通して、スマウグによる湖の町襲撃シーンから、本編は疾風怒涛のスタートをきる。まさにのっけからフルスロットル。凶暴なスマウグの吐き出す爆炎により、町を火の海にする迫力たるや!(膨大な人間が死んでいる割には、ゴア度は薄め)
本パートでは、バルドの決死の活躍が描かれ、スマウグと宿命の対決を果たすまでがアバンタイトルになる。
前稿から引き続きとなるが、この仕様には改めて物申しておきたい。やはり本シークエンスは、前作のクライマックスにすべきであろう。前作はバルドの物語としてまとめるべきであった。スマウグを生かして、3作目に引っ張りたかった意図は痛いほど分かる。でも、バルドの親子代々続いてきたスマウグとの因縁、屈辱に耐えてきた鬱憤を晴らす熱いプロセスが、2作に分断されてはあまり響かないのだ。これは残念。
本シリーズほどのヒット・シリーズなのだから、この辺りは興行性を度外視した構成にしてもよかったのではあるまいか。
スマウグ亡き後、それぞれの思惑で解放された王国の利権に群がる人間、エルフ、オーク、ドワーフたちが入り乱れていく。それらをつなぐ良心のビルボもまた、悪の指輪の力に魅了されている。(これが本当に児童書の内容か?と思われるほどの生々しさ)
ことほど左様に、人心の闇と光の揺らめきを大スケールかつエモーショナルに活写するのが、本シリーズの醍醐味であろう。
上記したバルドの汚名払拭のエピソードや、キーリ(エイダン・ターナー)とタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)の種族を越えた恋愛、等々、内容は盛りだくさんだが、メインはもちろんビルボとトーリンの友情である。…筈なのだが、めくるめくハードな戦闘シーンに埋もれて、いまいち盛り上がらなかった。
第一にトーリンの思考が理解できない。何らかの魔力に侵されたのだろうが、神秘性に逃げずに納得できる人間的なドラマをつくって欲しかった。
これらの不備は、もともと2部作であったのを3部作にした事情もあろうが、もったいない限りである。
とはいえ、映像の観応えは折り紙つき。IMAX3Dで観るべき重量級であり、観逃す手はあるまい。エレボールの荘厳な威容と雄大な自然といった深い映像美もさることながら、各勢力が激突する軍団乱戦は、息を飲む一大スペクタクル!1カットにどれだけ手間と金がかかっているのか、想像を絶する情報量にクラクラだ。
オークのボス格、アゾグとボルグが手強いしぶとさを見せ、各キャラクターの見せ場をつくるアクションの数々も大満腹!
(しかしながら、終始、踏んだり蹴ったりの湖の民の不憫なこと…)
相変わらず『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズへの目配せも心憎い。ガラドリアル(ケイト・ブランシェット)、サルマン(クロストファー・リー)、エルロンド(ヒューゴ・ウィーヴィング)といったお馴染みのキャラの裏活躍もばっちり用意されている。
レゴラス(オーランド・ブルーム)が、もう一人の主役とばかりに過度にピックアップされているのもご愛嬌。本シリーズから観た人は、さぞ謎の存在であろう。
ラスト。親愛の表現と共にチクリとクギをさすガンダルフ(イアン・マッケラン)の一言が胸に突き刺さる。牧歌的なホビット庄で普通の暮らしに戻るホッとした感覚と、冒険の味を知ってしまった今、かつての日常には戻れない切なさ…。
長いエンドロールに入ると、ここでもう本世界観の新作が観れないのかと急激な寂しさに見舞われた。もう一回、『ロード・オブ・ザ・リング』を観直したくなった次第である。そして、おそらくまた本シリーズが観たくなる無間ループに陥るのであろう。
冒険と指輪の魔力に魅入られたのは、観客もまた同じである。
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