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『海月姫』 (2014)

軽~く楽しめるオタク・シンデレラ・コメディ!

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突っ込みを入れるのが野暮にうつるほど、無難なエンターテインメントではあった。
本作は、東村アキコのTVアニメ化もされた同名漫画の映画化。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(13)で国民的女優となった我らが能年玲奈主演作だ。『あまちゃん』のイメージが強すぎたゆえに、以後は相当神経質な売り出し方をされている能年ちゃん。安易にTVドラマに出さずに、じっくり主演映画で勝負するスタイルが功を奏するかは不明ではあるが、キス封じ等、背後の締め付けが厳しいのは女優としては如何なものか?とは思う。二階堂ふみや満島ひかりみたく、曲者監督に体当たりで挑んで欲しいところではある。
例によって本作の原作は少女漫画である為、「少女漫画には手を出さない」という自らの掟に従って未読。はたして内容は如何に…!?

イラストレーターを目指す、クラゲオタクで冴えないダサダサ女子、月海(能年玲奈)が暮らすのは、レトロなアパート天水館。そこでは、鉄道オタクのばんばさん(池脇千鶴)、三国志オタクのまやや(太田莉菜)、和物オタクの千絵子(馬場園梓)、枯れ専のジジ様(篠原ともえ)といった似た者同士の面々が、「男を必要としない人生」をモットーに、世間に背を向け、身を寄せ合うように暮らしていた。
ある夜、熱帯魚店でトラブった月海は美しい女性に助けられ、自室に招待するも、翌朝、当の女性が蔵之介(菅田将暉)というイケメン男子の女装であったことが発覚。パニックになる月海であったが、女装した蔵之介は折にふれては天水館にやってきて皆に性別を偽り、入り浸るようになるのであった。
そんな蔵之介は実は政治家一家の次男。父は前大臣の鰐淵慶一郎(平泉成)で、腹違いの兄、修(長谷川博巳)はその秘書であった。そしてひょんなことから修が月海に恋をし、おまけに慶一郎が鍵を握る再開発計画により、天水館の取り壊しが持ち上がり…。

逆にバカにしているのでは?という勘繰りすらバカバカしい、あまりに表層的なオタク文化、都合の良すぎる展開、等々色々と言いたくなるが、むしろ深みのなさを許容して楽しむ、もしくは能年玲奈をひたすら愛でるのが、本作の鑑賞法である。そうわりきって観れば、お正月のファミリー・ムービーとして穏やかに楽しめよう。

本作の監督の過去作『こち亀 THE MOVIE』(11)、『ひみつのアッコちゃん』(12)と不満をつらつら書きつらねてきたが、やはりこの監督さんとはどうも性が合わない。職人技をもつ監督さんだとは思う。が、毒のない薄味ぶりが、個人的にちっとも心に響かないのだ。画のスケールの小ささも、良くも悪くもTV向きである。例えば、鰐淵慶一郎が街頭演説するシーンのエキストラ配置が、なんともしょぼい。どうにかならなかったのか。
脚本もエピソードが平板で強烈な起伏がなく、演出も輪をかけて単調で、滑り出しこそ快調だが段々飽きてダレまくった。
オタクたちの背負っているものや蔵之介の過去等、ジメジメとみせなかったのはよかったが…。

見どころは上記したごとく、何をおいても能年玲奈の可愛さである。フワァ~としたクラゲと本人の魅力が絶妙にマッチ。まさに水をえたクラゲである。『ホットロード』(14)なんかより、安心して観ていられる。

かような能年劇場の向こうを張るのが、女装男子の蔵之介を演じた菅田将暉だ。その美しさに、終始クラクラ。(とはいえ、どう見ても男なのだが…、おっと、突っ込み無用)
『仮面ライダーW』(09~10)のフィリップ君から見守る身としては、様々な役柄にチャレンジする役者としての急成長ぶりがうれしい限り。

メインとなるオタク・メンバーも芸達者が揃っており、過不足ナシ。他にも速水もこみちの美味しいトコどりや、片瀬那奈の外さないコメディエンヌぶりと脇役も充実。
堅物役の長谷川博巳のキャラに好感をもっただけに、彼の後始末もちゃんとしてほしかった。

オタク的な生き方、引きこもり生活を頭ごなしに否定せず、天水館のヌシが人気BL漫画家というイコン設定が示すように、その状態のままで外に向けて発信する生き方の標榜には全面的に同意する。そうは上手くは運ばないだろうが…。

加えて、クラゲの存在。見た目の気持ち悪さと海で刺される被害を顧みれば、忌むべき存在ながら、見方を変えれば、幻想的で美しく可愛くも写る。この多面的なものの見方こそ、本作のテーマなのだろう。
だとすれば、オタクを否定する人間たちの理論も平等に示してもよかったのではなかろうか?再開発を促進する側の利点等を描き、奥行きを持たせてもよかったように思う。

結局ウダウダ記してしまったが、多くを求めなければ、それなりに楽しめる一本である。


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