スタローンの最強スター・オーラがほとばしるカルト・アクション!
我らがシルベスター・スタローンの絶頂の当たり年といえば、何といっても1985年をおいて他にはない。何を隠そう、当年の全米興行ランキングの2位と3位を『ランボー2 怒りの脱出』と『ロッキー4』という氏の主演作が独占したのだ。(ちなみに第1位は、『バック・トゥ・ザ・フィーチャー』)
ロッキーとランボーという“持ちキャラ”を二つ確立する映画史上稀にみる快挙を成し遂げたスタローン。当年は、その二大キャラの続編を大ヒットさせたのだから何をかいわんや。まさにスターを獲得したマリオよろしく、無双状態である。
そして勝負の年となる次の年、青天井の野心をもつスタローンは第3の持ちキャラを生み出すべく手をうった。そのキャラの名は、コブラ!
という訳で本作は、スタローン伝説の重要な1ピースを担う(ファン基準の)快作である。はたしてスタローンの目論見は成功したのか…!?
…とひっぱったところで、皆さん結果をご存じだと思うので記してしまうが、一言でいうと、失敗した。アメリカでは中ヒットに留まり、もちろん(?)ラジー賞では主要部門ノミネートを達成。日本ではそれなりにヒットはしたが、現在に至るまでおバカ映画の烙印を押され続けている。
他方、ノリにノッている男が放つアクション映画としての異様な迫力がみなぎっており、カルトな人気を誇っているのも事実。僕も子供の頃からTVで繰り返し鑑賞し、ハッスルした心の一作である。
ロサンゼルス。今、街は“ナイト・スラッシャー”と呼ばれるカルト集団による連続殺人事件が発生し、市民を恐怖のどん底にたたき落としていた。今日も集団の一人が客を人質にスーパーマーケットに立てこもる事件が発生。機動隊員が手をこまねく中、“コブラ”と異名をとるロス市警のはみ出し者、コブレッティ刑事(シルベスター・スタローン)が招聘される。単身乗り込み籠城犯を射殺し、あっさり事件を解決するコブラ。しかしそんなコブラの容赦のないやり方に、世間と警察上層部は批難の矛先を向けるのであった。
ある夜、“ナイト・スラッシャー”の犯行現場を偶然目撃したモデルのイングリット(ブリジット・ニールセン)は、一味に追われる羽目になり、危機一髪、警察に救われる。イングリットの警護をすることになったコブラは、彼女の証言から“ナイト・スラッシャー”の素性を割りだすも、敵は警察内部にも浸食しており、仲間すら当てにならない。やむなくコブラは彼女を市外に逃がそうとするのだが、敵の追手が迫ってきて…。
本作の原作は、ポーラ・ゴズリングの小説『逃げるアヒル』なのだが、全く別物にスタローンが改変し、原作者の怒りをかった。(後に原作は、ウィリアム・ボールドウィン、シンディ・クロフォード主演で『フェア・ゲーム』(95)として忠実に再映画化)
もともと本企画は、ライトな刑事モノ『ビバリーヒルズ・コップ』として始動したのだが、スタローンが書き上げてきたコメディ要素のないダークヒーローもののシナリオにスタジオが難色を示し、スタローンは離脱。独自に『コブラ』として製作する運びと相成った。
いうまでもなく『ビバリーヒルズ・コップ』はエディ・マーフィー主演で84年に映画化され、シリーズ化もされる大ヒットとなった。もしスタローンがワガママをいわずに当初の企画に残っていれば、コメディ路線へのシフトは案外早々と成功していたかもしれない。なんとなくこの時点でスタローンは道を誤った気がするが、そこは悔やんでも詮なきこと。
ボクサー、兵士と続く第3のキャラとして定番の“刑事”をピックアップしたのは、眼の付けどころとしては悪くはない。
そこでスタローンが試みたアプローチは、ズバリ、映画史に残る刑事キャラ『ダーティー・ハリー』(71)のハリー・キャラハンの継承であった。
現在の感覚からすれば、大それた真似を!と呆れ果てるが、当時のスタローンの王様空気の中では、あながち違和感はなかったのかもしれない。むしろ老いたイーストウッドの代わりを担わんと敬意を表す姿勢は、殊勝な心がけといえよう。(実際にイーストウッドの許可をとったのかは不明)
現にキャラとストーリーラインは『ダーティー・ハリー』そのまんまであり、作劇は限りなくシンプルに90分の省エネで仕上げる当時のスタローン・スタイルを当てはめた格好となっている。
また、当作の悪役スコルピオ役のアンドリュー・ロビンソンを官僚的な上司役で、ハリーの相棒役のレニー・サントーニをそのままコブラの相棒役(役名も同じゴンザレス)に起用。今となってはお笑い草だが、大胆なオマージュを施している。なんともはや、可愛げがあるではないか。
そして何といっても、ハイパー・バイオレンス・コップ、コブラのキャラ造形にかけるスタローンの気合たるや、圧巻の一言。
ハーフミラーのレイバンに口に咥えたマッチ棒、黒のニットシャツにジーンズ、皮手袋、ロングのウェスタン・コート、愛銃はコブラの紋章が刻まれたコルト・ガバメントというファッションからして、メーターは振り切れている。バリバリのコブラ仕様の改造車マーキュリーも超クール!
マリオン・コブレッティのマリオンはいうまでもなく、ジョン・ウェインの本名であり、西部劇ヒーローにも敬意を表しているのだから気が抜けない。(名前自体は、F1ワールド・チャンピオンのマリオ・アンドレッティから拝借)
何よりそれらを問答無用で成立させてしまうスタローンの醸しだすスター・オーラに犯罪者でなくとも屈服してしまう。こんなキャラ推しだけの作品は、早々お目にかかれまい。
他、イングリット・ヌードセンという本名をエロくもじったヒロインを演じた、ブリジット・ニールセンのゴージャス美女ぶりも忘れてはならない。役名もいい加減だが、存在も薄味である。
やや本編が彼女とのロマンスに不当に傾いてしまったのも、スタローンと撮影前に結婚した影響であろう。(ただし撮影後に即、離婚)
シュワちゃんやトニー・スコット監督といった剛腕たちを渡り歩いたツワモノである彼女は、やはり悪役の方がしっくりくる。
全編繰り広げられるアクションも、実際問題、今観るとたいしたことはない。
だが、とんでもなく残虐な戦闘をしている割に、血がほとんど出ず、意外にグロくないのが新鮮である。この辺り、現代アクションが原点にもどって見習う必要があろう。
また、『ジェイソン・ボーン』シリーズが切り開いた、細切れ手振れアクションに飽き飽きしている世代としては、こういう手造りアクションを眼にすると妙にホッとする。バックで走行しながらコブラが敵の車にマシンガンをぶっ放すシーンのかっちょいいこと!
確かに褒められた映画ではない。同年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演作が『ゴリラ』という便乗タイトルで公開される等、一歩リードしていたスタローンだが、すぐにデッドヒートはシュワちゃんに追い抜かれ、凋落していく運命となる。アクション・スターの座をあけ渡す、氷河期の扉を本作が開いたといっても過言ではあるまい。
意味不明の狂信的な敵から女を守り、襲い来る相手をぶっ殺す。悪ボス役(ブライアン・トンプソン)の印象は、やたら格好いいオリジナル・ナイフのみという体たらく。全編突っ込みどころ満載の、ただそれだけの映画なのだから、さもありなん。
とはいえ、上記したキャラの魅力と、頭を空にして楽しめる迷いのないスカッとする展開に妙な愛嬌があるのは事実。あまりの薄さに内容は覚えていないが、何となく定期的に観てしまう魔力を本作は秘めている。考えるのではなく、感じる映画といおうか。
二度と観る気の起こらない内容ペラペラ・アクションは、今もなお乱造されており、それらと比べると本作の偉大さが骨身に沁みよう。
人は本作をバカ映画と呼ぶが、愛すべきバカ映画を生み出すのは、名作と同じくらい困難なのだ。
スタローンよ、いまこそ本作の続編をつくってくれないかなぁ。
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我らがシルベスター・スタローンの絶頂の当たり年といえば、何といっても1985年をおいて他にはない。何を隠そう、当年の全米興行ランキングの2位と3位を『ランボー2 怒りの脱出』と『ロッキー4』という氏の主演作が独占したのだ。(ちなみに第1位は、『バック・トゥ・ザ・フィーチャー』)
ロッキーとランボーという“持ちキャラ”を二つ確立する映画史上稀にみる快挙を成し遂げたスタローン。当年は、その二大キャラの続編を大ヒットさせたのだから何をかいわんや。まさにスターを獲得したマリオよろしく、無双状態である。
そして勝負の年となる次の年、青天井の野心をもつスタローンは第3の持ちキャラを生み出すべく手をうった。そのキャラの名は、コブラ!
という訳で本作は、スタローン伝説の重要な1ピースを担う(ファン基準の)快作である。はたしてスタローンの目論見は成功したのか…!?
…とひっぱったところで、皆さん結果をご存じだと思うので記してしまうが、一言でいうと、失敗した。アメリカでは中ヒットに留まり、もちろん(?)ラジー賞では主要部門ノミネートを達成。日本ではそれなりにヒットはしたが、現在に至るまでおバカ映画の烙印を押され続けている。
他方、ノリにノッている男が放つアクション映画としての異様な迫力がみなぎっており、カルトな人気を誇っているのも事実。僕も子供の頃からTVで繰り返し鑑賞し、ハッスルした心の一作である。
ロサンゼルス。今、街は“ナイト・スラッシャー”と呼ばれるカルト集団による連続殺人事件が発生し、市民を恐怖のどん底にたたき落としていた。今日も集団の一人が客を人質にスーパーマーケットに立てこもる事件が発生。機動隊員が手をこまねく中、“コブラ”と異名をとるロス市警のはみ出し者、コブレッティ刑事(シルベスター・スタローン)が招聘される。単身乗り込み籠城犯を射殺し、あっさり事件を解決するコブラ。しかしそんなコブラの容赦のないやり方に、世間と警察上層部は批難の矛先を向けるのであった。
ある夜、“ナイト・スラッシャー”の犯行現場を偶然目撃したモデルのイングリット(ブリジット・ニールセン)は、一味に追われる羽目になり、危機一髪、警察に救われる。イングリットの警護をすることになったコブラは、彼女の証言から“ナイト・スラッシャー”の素性を割りだすも、敵は警察内部にも浸食しており、仲間すら当てにならない。やむなくコブラは彼女を市外に逃がそうとするのだが、敵の追手が迫ってきて…。
本作の原作は、ポーラ・ゴズリングの小説『逃げるアヒル』なのだが、全く別物にスタローンが改変し、原作者の怒りをかった。(後に原作は、ウィリアム・ボールドウィン、シンディ・クロフォード主演で『フェア・ゲーム』(95)として忠実に再映画化)
もともと本企画は、ライトな刑事モノ『ビバリーヒルズ・コップ』として始動したのだが、スタローンが書き上げてきたコメディ要素のないダークヒーローもののシナリオにスタジオが難色を示し、スタローンは離脱。独自に『コブラ』として製作する運びと相成った。
いうまでもなく『ビバリーヒルズ・コップ』はエディ・マーフィー主演で84年に映画化され、シリーズ化もされる大ヒットとなった。もしスタローンがワガママをいわずに当初の企画に残っていれば、コメディ路線へのシフトは案外早々と成功していたかもしれない。なんとなくこの時点でスタローンは道を誤った気がするが、そこは悔やんでも詮なきこと。
ボクサー、兵士と続く第3のキャラとして定番の“刑事”をピックアップしたのは、眼の付けどころとしては悪くはない。
そこでスタローンが試みたアプローチは、ズバリ、映画史に残る刑事キャラ『ダーティー・ハリー』(71)のハリー・キャラハンの継承であった。
現在の感覚からすれば、大それた真似を!と呆れ果てるが、当時のスタローンの王様空気の中では、あながち違和感はなかったのかもしれない。むしろ老いたイーストウッドの代わりを担わんと敬意を表す姿勢は、殊勝な心がけといえよう。(実際にイーストウッドの許可をとったのかは不明)
現にキャラとストーリーラインは『ダーティー・ハリー』そのまんまであり、作劇は限りなくシンプルに90分の省エネで仕上げる当時のスタローン・スタイルを当てはめた格好となっている。
また、当作の悪役スコルピオ役のアンドリュー・ロビンソンを官僚的な上司役で、ハリーの相棒役のレニー・サントーニをそのままコブラの相棒役(役名も同じゴンザレス)に起用。今となってはお笑い草だが、大胆なオマージュを施している。なんともはや、可愛げがあるではないか。
そして何といっても、ハイパー・バイオレンス・コップ、コブラのキャラ造形にかけるスタローンの気合たるや、圧巻の一言。
ハーフミラーのレイバンに口に咥えたマッチ棒、黒のニットシャツにジーンズ、皮手袋、ロングのウェスタン・コート、愛銃はコブラの紋章が刻まれたコルト・ガバメントというファッションからして、メーターは振り切れている。バリバリのコブラ仕様の改造車マーキュリーも超クール!
マリオン・コブレッティのマリオンはいうまでもなく、ジョン・ウェインの本名であり、西部劇ヒーローにも敬意を表しているのだから気が抜けない。(名前自体は、F1ワールド・チャンピオンのマリオ・アンドレッティから拝借)
何よりそれらを問答無用で成立させてしまうスタローンの醸しだすスター・オーラに犯罪者でなくとも屈服してしまう。こんなキャラ推しだけの作品は、早々お目にかかれまい。
他、イングリット・ヌードセンという本名をエロくもじったヒロインを演じた、ブリジット・ニールセンのゴージャス美女ぶりも忘れてはならない。役名もいい加減だが、存在も薄味である。
やや本編が彼女とのロマンスに不当に傾いてしまったのも、スタローンと撮影前に結婚した影響であろう。(ただし撮影後に即、離婚)
シュワちゃんやトニー・スコット監督といった剛腕たちを渡り歩いたツワモノである彼女は、やはり悪役の方がしっくりくる。
全編繰り広げられるアクションも、実際問題、今観るとたいしたことはない。
だが、とんでもなく残虐な戦闘をしている割に、血がほとんど出ず、意外にグロくないのが新鮮である。この辺り、現代アクションが原点にもどって見習う必要があろう。
また、『ジェイソン・ボーン』シリーズが切り開いた、細切れ手振れアクションに飽き飽きしている世代としては、こういう手造りアクションを眼にすると妙にホッとする。バックで走行しながらコブラが敵の車にマシンガンをぶっ放すシーンのかっちょいいこと!
確かに褒められた映画ではない。同年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演作が『ゴリラ』という便乗タイトルで公開される等、一歩リードしていたスタローンだが、すぐにデッドヒートはシュワちゃんに追い抜かれ、凋落していく運命となる。アクション・スターの座をあけ渡す、氷河期の扉を本作が開いたといっても過言ではあるまい。
意味不明の狂信的な敵から女を守り、襲い来る相手をぶっ殺す。悪ボス役(ブライアン・トンプソン)の印象は、やたら格好いいオリジナル・ナイフのみという体たらく。全編突っ込みどころ満載の、ただそれだけの映画なのだから、さもありなん。
とはいえ、上記したキャラの魅力と、頭を空にして楽しめる迷いのないスカッとする展開に妙な愛嬌があるのは事実。あまりの薄さに内容は覚えていないが、何となく定期的に観てしまう魔力を本作は秘めている。考えるのではなく、感じる映画といおうか。
二度と観る気の起こらない内容ペラペラ・アクションは、今もなお乱造されており、それらと比べると本作の偉大さが骨身に沁みよう。
人は本作をバカ映画と呼ぶが、愛すべきバカ映画を生み出すのは、名作と同じくらい困難なのだ。
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