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Channel: 相木悟の映画評
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『96時間/レクイエム』 (2014)

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子煩悩オヤジ、三たびの大暴走!



愛すべき還暦ヒーロー、ブライアン・ミルズの活躍を、期待通り堪能できる一作ではあるのだが…。
本作は、演技派俳優リーアム・ニーソンを一躍アクション・スターへと覚醒させた記念碑『96時間』シリーズ第3弾。監督は前作に引き続き、オリビエ・メガトンが担当。製作、共同脚本は、もちろんこの人リュック・ベッソンだ。
一作目のサスペンスのキーとなる“96時間”のリミットを邦題にしてしまったため、続編でも意味不明に引きずる羽目となった本シリーズ。この珍事態が本シリーズの愛嬌を象徴していよう。はてさて、最終章と銘打つ今回は、どんな趣向で楽しませてくれたのか…!?

イスタンブールでの騒動の後、ロサンゼルスに戻った元CIA秘密工作員のブライアン(リーアム・ニーソン)は、娘キム(マギー・グレイス)との仲も良好。別れた妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)からは現夫スチュアート(ダグレイ・スコット)とうまくいっていない旨を相談され、再び家族3人が集う幸せな未来に胸を躍らせていた。ところが、そんな夢は、突如崩壊してしまう。ブライアンの家で、レノーアの死体が発見されたのだ。しかも殺人の容疑者として指名手配されたブライアンは警察を振りきり、真相を追うべく独自調査を開始する。一方、市警の敏腕警部ドッツラー(フォレスト・ウィテカー)が事件の担当に当たり、ブライアンを追いつめていき…。

一作目では、パリに旅行中、アルバニア系犯罪組織にさらわれた娘キムを救出すべく、単身パリのアンダーグラウンドに乗り込んで大暴れ。二作目ではイスタンブールに家族水入らずの旅行中、前作で息子を殺された組織のボスの報復を受け、今度はブライアンが誘拐されるも壮絶な逆襲にうって出た。
それらのストーリーは、単なる巻き込まれ型ではなく、一作目は娘の軽率な行動であったり、二作目は復讐の連鎖であったりと自業自得の面もあり、プロットの冴えがキラリと光る。今回もその点は継承。ネタバレとなるので詳細は記さないが、よく練られてはいる。
本作は、妻を殺されて濡れ衣を着せられ、逃亡しながら犯人と黒幕を追跡する、まんま『逃亡者』スタイル。欧州から本拠地ロサンゼルスへ、追う者から追われる者へと毎回、路線を変えてくる創意工夫は讃えたい。

しかし、面白かったかと問われれば、残念ながらさにあらず。これが驚くほど盛り上がらなかった。
まず、敵は誰なのか?目的は何なのか?ブライアンが事件の謎を追っていくプロセスに、ハラハラドキドキがない。如何せん彼が万能過ぎて危機が危機に見えず、一本調子なのだ。
追う側の警部ドッツラー役に、フォレスト・ウィテカーを配したキャスティングは、若干タイプキャストながら許容できよう。でもこの人物、執拗さもないし、迫力もないしで、ちっともキャラが立っていないのだから何をかいわんや。『逃亡者』の劇場版(93)でジェラード警部を演じたトミー・リー・ジョーンズの存在感とは比べるべくもない。

さらに輪をかけて、悪役連中も頼りない。もっとブライアンに匹敵する強いライバルを出してもよかったのではなかろうか?個人的にはドッツラーを悪党にして、対決させるぐらいやってほしかった。
敵側が弱いのは毎度のことなので、わざとブライアンの無双押しに徹しているのかもしれないが…。

また、シリーズ最大の醍醐味といってもいいブライアンのあっと驚くCIA仕込みの様々なスキルの披露がほとんどないのもいただけない。
アクション自体は、ぶっ飛んだカーチェイス等、観るべきものはあるが、総じてソフト化。家族のためなら問答無用の殺戮マシーンと化す狂気の父性愛も削がれてしまっている。
でもまあ、これらの薄味がヨーロッパ・コープの味であるとはいえる。が、当社のライトさが気に入らなくとも本シリーズだけは支持してきたファンにとっては、軍門に下ったようで裏切られた感が半端あるまい。

そんな中でも、ブライアンを演じるリーアム・ニーソンの渋い魅力は相変わらず。アクション・ヒーロー姿もすっかり板についている。そういう意味では、もっとコミカルな味付けがあってもよかったように思うのだが…。

しかしながら、本シリーズ。宣伝文句の通り、本作をもって完結してしまうのだろうか?
今回は残念作であったが、毎回スタイルを変え、『トラック野郎』や『寅さん』のように恒久的にシリーズ化してもいいのでは?
思い起こせば、2作目も正月明けの興行であった。できれば、正月の恒例行事にして、世界各地でトラブルに対処するブライアン(とその家族)の姿をみせて欲しいところではある。


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