一粒で二度おいしい父子ドラマ×法廷サスペンス!
ふたつのジャンルを融合させた、味わい深い一品ではあるのだが…。
本作は、『アイアンマン』シリーズでお馴染みのチョイ悪親父スター、ロバート・ダウニー・Jr.主演作。妻と共に立ち上げた製作会社“チーム・ダウニー”の記念すべき第一回作品だ。
若くしてオスカーノミニーをうける等、一躍脚光を浴びるもドラッグで転落。悪童ぶりから業界から干され、あろうことかアメコミ・ヒーローとして大復活。いまや『アイアンマン』と『シャーロック・ホームズ』というヒット・シリーズをもつマネーメイキング・スターになった激動の男ダウニー。
そんな酸いも甘いもかみわけたノリにノッている俳優が、他者から与えられる役柄ではなく、自ら演じたい作品を自社で製作してしまうケースはままあり、トム・クルーズやジョージ・クルーニー、ブラット・ピットといった先達は良質作を生み出し続けている。はたしてそこに仲間入りした我らがダウニーは、どんな作品を生み出したのか…!?
シカゴで金持ち相手の弁護士として名を馳せるハンク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、一見、順調にみえて、私生活は妻と離婚協議中で娘の親権争いの真っ最中。そんなハンクのもとにインディアナ州の故郷から母の訃報がもたらされる。こうしてハンクは久しぶりに故郷の田舎町に帰り、兄のグレン(ヴィンセント・ドノフリオ)と精神薄弱者の弟デイル(ジェレミー・ストロング)と再会を果たす。しかし昔から折り合いが悪く絶縁状態にあった判事の父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)とは、いまだにうち解けないでいた。母の葬儀も終わり、さっそく帰ろうとするハンクであったが、そこでジョセフがひき逃げ殺人の容疑で逮捕されるという事件が発生。40年間、法廷で正義を貫き、世間からの信頼も厚いジョセフが殺人を犯すはずがない。帰るに帰れなくなったハンクは、ジョセフの選んだ弁護士のサポートをすることに。しかし被害者はジョセフがかつて軽罪に処したが、出所後、罪を犯した男。ジョセフに動機がある上、次々に疑わしい証拠が浮かんできて…。
なんとなく物々しい邦題のサブタイトルから法廷モノの印象を強くうけるがさにあらず。全体の印象としては、都会でバリバリ働いていた人間がふと田舎に帰り、原点に接し、人生を見つめ直す『ヤング≒アダルト』(11)、『エリザベスタウン』(05)よろしく定番ホームドラマである。
本作でピックアップされるテーマは、父子関係だ。男子にとって父親は、越えなければならない壁であり、子供の頃は驚異として立ち塞がる。が、大人になるにつれ、あれほど怖かった父親が老いていき、立場が逆転した時の切なさたるや…。
ハンクがジョセフの力になることで真の一人前になっていくプロセスは、誰もが多かれ少なかれ共感できよう。
かような父子ドラマを殺人事件のからむ法廷サスペンスにダブらせたところが、本作のミソ。判事であったジョセフをハンクが弁護する逆転構造、その中でのハンクとジョセフの対立、暴かれるジョゼフの哀しい真相、そして同時に明かされる父の愛にホロリと涙する。この辺りは実によくできている。
ハンクを演じるロバート・ダウニー・Jr.は、強欲で軽薄なプレイボーイで仕事は凄腕、でもチャーミングで憎めないという本役を、「俺に任せろ!」とばかりに、水を得た魚のように余裕で役をこなしている。
ジョセフ役のロバート・デュバルの切なくも雄々しい熟練の存在感もまた負けていない。いやむしろ食っている。
このWロバートの舌戦も見どころのひとつだ。
強敵感が半端ない検事役のビリー・ボブ・ソーントン。元カノ役でロマンス・パートを担う色気ムンムンのヴェラ・ファーミガ。他、怪優ヴィンセント・ドノフリオまで脇にキラリと光る役者がゾロッと揃っているのもダウニー兄貴の人徳か。
ただ本作、ノスタルジーな出戻りホームドラマとベタな法廷モノ、このひねりのないふたつを掛け合わせて面白かったかと問われると、「う~ん」と首を捻らざるをえない。相乗効果はあまりなく、先読み出来る分、どっちつかずのテンポの悪い冗長な流れになってしまったのが悔やまれる。個人的には、すっかり退屈してしまった。全米でいまいち興行が振るわなかったのもさもありなん。
今回はちょっぴり残念な結果であったが、ロバート・ダウニー・Jr.には、あり余る財力を駆使して、純粋に優れたプロットや若手をとりあげ、良質な作品を生み出してほしいものである。今後も期待しています。
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ふたつのジャンルを融合させた、味わい深い一品ではあるのだが…。
本作は、『アイアンマン』シリーズでお馴染みのチョイ悪親父スター、ロバート・ダウニー・Jr.主演作。妻と共に立ち上げた製作会社“チーム・ダウニー”の記念すべき第一回作品だ。
若くしてオスカーノミニーをうける等、一躍脚光を浴びるもドラッグで転落。悪童ぶりから業界から干され、あろうことかアメコミ・ヒーローとして大復活。いまや『アイアンマン』と『シャーロック・ホームズ』というヒット・シリーズをもつマネーメイキング・スターになった激動の男ダウニー。
そんな酸いも甘いもかみわけたノリにノッている俳優が、他者から与えられる役柄ではなく、自ら演じたい作品を自社で製作してしまうケースはままあり、トム・クルーズやジョージ・クルーニー、ブラット・ピットといった先達は良質作を生み出し続けている。はたしてそこに仲間入りした我らがダウニーは、どんな作品を生み出したのか…!?
シカゴで金持ち相手の弁護士として名を馳せるハンク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、一見、順調にみえて、私生活は妻と離婚協議中で娘の親権争いの真っ最中。そんなハンクのもとにインディアナ州の故郷から母の訃報がもたらされる。こうしてハンクは久しぶりに故郷の田舎町に帰り、兄のグレン(ヴィンセント・ドノフリオ)と精神薄弱者の弟デイル(ジェレミー・ストロング)と再会を果たす。しかし昔から折り合いが悪く絶縁状態にあった判事の父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)とは、いまだにうち解けないでいた。母の葬儀も終わり、さっそく帰ろうとするハンクであったが、そこでジョセフがひき逃げ殺人の容疑で逮捕されるという事件が発生。40年間、法廷で正義を貫き、世間からの信頼も厚いジョセフが殺人を犯すはずがない。帰るに帰れなくなったハンクは、ジョセフの選んだ弁護士のサポートをすることに。しかし被害者はジョセフがかつて軽罪に処したが、出所後、罪を犯した男。ジョセフに動機がある上、次々に疑わしい証拠が浮かんできて…。
なんとなく物々しい邦題のサブタイトルから法廷モノの印象を強くうけるがさにあらず。全体の印象としては、都会でバリバリ働いていた人間がふと田舎に帰り、原点に接し、人生を見つめ直す『ヤング≒アダルト』(11)、『エリザベスタウン』(05)よろしく定番ホームドラマである。
本作でピックアップされるテーマは、父子関係だ。男子にとって父親は、越えなければならない壁であり、子供の頃は驚異として立ち塞がる。が、大人になるにつれ、あれほど怖かった父親が老いていき、立場が逆転した時の切なさたるや…。
ハンクがジョセフの力になることで真の一人前になっていくプロセスは、誰もが多かれ少なかれ共感できよう。
かような父子ドラマを殺人事件のからむ法廷サスペンスにダブらせたところが、本作のミソ。判事であったジョセフをハンクが弁護する逆転構造、その中でのハンクとジョセフの対立、暴かれるジョゼフの哀しい真相、そして同時に明かされる父の愛にホロリと涙する。この辺りは実によくできている。
ハンクを演じるロバート・ダウニー・Jr.は、強欲で軽薄なプレイボーイで仕事は凄腕、でもチャーミングで憎めないという本役を、「俺に任せろ!」とばかりに、水を得た魚のように余裕で役をこなしている。
ジョセフ役のロバート・デュバルの切なくも雄々しい熟練の存在感もまた負けていない。いやむしろ食っている。
このWロバートの舌戦も見どころのひとつだ。
強敵感が半端ない検事役のビリー・ボブ・ソーントン。元カノ役でロマンス・パートを担う色気ムンムンのヴェラ・ファーミガ。他、怪優ヴィンセント・ドノフリオまで脇にキラリと光る役者がゾロッと揃っているのもダウニー兄貴の人徳か。
ただ本作、ノスタルジーな出戻りホームドラマとベタな法廷モノ、このひねりのないふたつを掛け合わせて面白かったかと問われると、「う~ん」と首を捻らざるをえない。相乗効果はあまりなく、先読み出来る分、どっちつかずのテンポの悪い冗長な流れになってしまったのが悔やまれる。個人的には、すっかり退屈してしまった。全米でいまいち興行が振るわなかったのもさもありなん。
今回はちょっぴり残念な結果であったが、ロバート・ダウニー・Jr.には、あり余る財力を駆使して、純粋に優れたプロットや若手をとりあげ、良質な作品を生み出してほしいものである。今後も期待しています。
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