Quantcast
Channel: 相木悟の映画評
Viewing all articles
Browse latest Browse all 113

『テラスハウス クロージング・ドア』 (2015)

$
0
0
人間の愚かさと愛おしさを覗き見る、リアリティショー劇場版!



これを新時代の観客参加型映画と好意的にとるか否か?なかなかにユニークな映画体験であった。
リッチな家をシェアして暮らす男女6人の日々を追い、人気を博したリアリティショー『テラスハウス』(12~14)。本作は、ファンに惜しまれつつ放送終了したかにみえた当番組のまさかの復活であり、真の最終章となる劇場版だ。
昨今は、バラエティ番組の一企画が映画になったりと、革新的状況に「コレってどうなんだ?」と正直困惑していたが、いざ自分が好きだった番組がそうなると普通に盛り上がってしまうのだから我ながら勝手である。当番組は恥ずかしげもなく、毎週楽しみに視聴。主音声とスタジオメンバーがVTRを実況トークする副音声の両方をチェックするハマりようであった。
という訳で、本作も公開初日のバレンタインデーに、男一人で観に行くという暴挙に出た次第である。周囲はカップルだらけの極限状態の中、はたして精神は崩壊せずに済んだのか?本邦初のリアリティショー映画の成否や如何に…!?

日本においてもアメリカにおいても、リアリティショーは今も昔もTV番組の人気ジャンルであり、様々な作品が生み出されてきた。『テラスハウス』は、『あいのり』(99~09)の流れをくむ恋愛系リアリティショーなのだが、僕はそれらを観たことはない。本番組については、“たまたまTVをつけた時にやっていた”という偶然が数回続き、気付けば本格的に夢中になっていたという按配である。リアリティショーについては、全くの初心者であるので、その点はご勘弁を。

出演者の人気がブレイクしたり、人格的にバッシングされたりと話題に事欠かず、熱心な支持者がいたのに本番組が終了した経緯については、“やらせ”疑惑や裏側のスキャンダラスな報道等、まことしやかに囁かれている。が、世界の亀山社長が言うように、出演者が有名になり過ぎて安全維持が困難になり、コストと視聴率を考慮した結果というのが正しいところであろう。
僕的には、“やらせ”に関しての批判は、低次元な物言いだと思う。お題目のように唱える「台本は一切ございません」という宣言は、確かに微妙な表現ではある。番組サイドが認めているように、台本こそなくても作家による「こういう風に行動したら?」という誘導とお膳立てがあったのは事実であろう。視聴者はかような作為は承知の上であり、それでいて各キャラのリアクションを楽しんでいるのだから、さして問題ではあるまい。少なくとも僕はそうだった。要は、アンチもつい観てしまい、心をざわつかせる“放ってはいけない”魔力があるということである。これは公開前から観てもいない人物からバッシングを浴びている劇場版も然り。

本番組のスタンスは、美男美女(時には個性派も交じる)の共同生活を、オシャレに描写。必然的に出演者は芸能関係者もしくは志望者、いわんや売名目的(←別に悪くはなかろう)の人物が多くなるのはやむナシといったところ。華やかなりし彼らの光と闇、恋愛や仕事上の悩み、裏の策略、そしてバカさ加減を、憧れの眼差しと笑いものにする姿勢で、突っ込みながら観るのが本番組の楽しみ方である。金持ちをコケにするコメディの構図と同様である。
自分とは別世界にいながら、生々しい生態を放つ彼らの人間観察として、僕はいちいち興味深かった。

という訳で今回の劇場版であるが、内容を書き殴りたくてウズウズするものの、やめておく。ここはできるだけ予備知識ナシで挑んでほしい。(ファンは特に)
TV放送の最終回、ミスター・テラスハウスのてっちゃんが家を出ようとした際に、扉の先に新メンバーが現れ、新たな生活がスタート。どんなメンバーが加入し、どんな恋愛模様が繰り広げられるのか。個性的なキャラが加わり、テッパンの展開に大いに笑い、最後には、ちょっと泣いた。

不満を記しておくと、観ていて痛感したのが、TV放送の30分の尺の適切さ。いいところでバタンッと“次週に続く”と終わって身もだえするぐらいが、やはり丁度いい。本作の場合、終わりがあるのが分かっているだけに、観ていて疲れるのだ。
それに2時間という尺と正味3ヶ月程度の期間では、皆に見せ場をという訳にはいかず、ポジション不明のキャラもおり、如何せん内容が薄い。
せっかくの映画なのに、内容はTVシリーズの延長に過ぎず、かつスケール感がないというのは寂し過ぎよう。

しかし、製作サイドが本作の意図として、「SNSで感想をシェアしてリアルタイムの交流でファンが盛り上がっていたTV版から進化し、劇場という空間でファン同士が現実の時間をシェアしてほしい」という試みには賛同したい。現に満員の館内の皆で、てっちゃんのトホホぶりに爆笑し、性悪女にムカムカし、期待を裏切らない男、今井洋介のミラクルな行動にスタンディング・オベーションを送る共有感は至福の時であった。

また、本作は一見さんも充分面白いと思う。TV放送を観ていないからと敬遠するのはあまりに勿体ない。そのために狂言回しのキャラが用意されているのだが、あまりうまく起用していなかったのは残念ではあるが…。
ファンの贔屓目ではなく、とかく観ておいて損はない珍作である。


↓本記事がお気に入りましたら、ポチッとクリックお願いいたします!
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

人気ブログランキング

Viewing all articles
Browse latest Browse all 113

Trending Articles