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Channel: 相木悟の映画評
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第87回アカデミー賞!結果編

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ついにこの日がやってきました。
日本時間2月23日、ところはLAドルビー・シアター。
全世界の映画ファンが固唾を飲んで見守る中、映画界最大の祭典、第87回アカデミー賞授賞式が開催されました!
それではさっそく、主要部門の受賞結果をどうぞ!!


作品賞●『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
監督賞●アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』)
主演男優賞●エディ・レッドメイン(『博士と彼女のセオリー』)
主演女優賞●ジュリアン・ムーア(『アリスのままで』)
助演男優賞●J・K・シモンズ(『セッション』)
助演女優賞●パトリシア・アークエット(『6才のボクが、大人になるまで』)


相木「初っ端の助演賞発表から本命をおさえた波乱のない展開に流れるかと思いきや、美術、メイクアップ、衣装デザイン賞を『グランド・ブダペスト・ホテル』がさらい、録音、編集賞に『セッション』、オリジナル脚本賞に『バードマン~』、脚色賞に『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』と徐々に賞が分散。予想がつかない中、結果、『バードマン~』が作品賞と監督賞を制覇しました。個別に見ていく前に、もし〈予想編〉をまだ読んでいない方がいらっしゃれば、良ければ合わせてご覧頂ければ幸せでございます。それではさっそく、お馴染みのゲストを紹介しましょう。浜村淳の後釜を狙う浪花のシネマ・アイ、“通天閣の定吉”さんです」
定やん「わしらの予想もキレイに分散したのう。今回は引き分けか」
相木「確かに3対3ですけど、あくまで数の上です。作品賞と監督賞を的中させた僕の方に分があるのでは?」
定やん「甘いな。東京駅開業記念Suicaの販売数の見通しを誤ったJR並みに甘いな。わしは本命をあえて外して主演男優賞を当てたんやぞ。この功績は讃えられて然るべきちゃうか?」
相木「いやいや、彼は対抗馬でしたし、そういう意味では僕の監督賞だって―」
定やん「ギャーギャーうるさいやっちゃな。器の小さい。はよ結果みていくぞ!」


助演男優賞●J・K・シモンズ(『セッション』)
(予想:相木→J・K・シモンズ 定やん→イーサン・ホーク)


相木「本命中の本命の受賞となりましたが、やはり若手監督の低予算作品で、彼のような堅実な仕事をしてきたベテランが受賞するのは感動的な構図ですね」
定やん「公開時29歳の監督に全力で応えて、結果を残すんやから役者魂ココにありやな」
相木「スピーチも人格者らしく、身につまされました」
定やん「徹底的に主人公をしごく音楽学校の鬼教師役を演じた氏から、親を大事にするよう諭されたら、そりゃ直立で襟を正すわな」
相木「親不孝ばかりしている身を、反省しました。こうやって自分の世話になってきた人たちに感謝をする意義を学べるのも、授賞式鑑賞の醍醐味です」
定やん「と言いつつ、J・K・シモンズの監督への感謝は、いやにあっさりしとったな」
相木「そこは突っ込まないでおきましょう」


助演女優賞○パトリシア・アークエット(『6才のボクが、大人になるまで』)
(予想:相木→エマ・ストーン 定やん→パトリシア・アークエット)

定やん「こちらも大本命がゲットや。スピーチも女性問題に触れて大盛り上がり!」
相木「メリル・ストリープの余裕の同調ぶりが、印象的でしたね。さすが大御所」
定やん「やはり前にも言うた通り、女優として12年間を、体型の変化まで含めてリアルに記録した覚悟は尊敬に値するわ」
相木「また6才から大学生まで成長する子供に対する重要なリアクションを担い、観客を見事に共感させた彼女の功績は大きいですよ。納得の受賞です」
定やん「『トゥルー・ロマンス』のヒロイン辺りから注目され、その後はTVシリーズでコンスタントに活躍するも、いまいち代表作に恵まれんかった彼女に、ようやく花火がうちあがって感無量や」
相木「個人をみると、さらに長く時の流れが絡んでくる訳ですか。そういえば、僕と定やんとの予想合戦ももう7年目になるんですね…」
定やん「何を唐突に遠い目をしとるんや!後ろを振り返ってる間もなく次いくで!」


主演男優賞◆エディ・レッドメイン(『博士と彼女のセオリー』)
(予想:相木→ベネディクト・カンバーバッチ 定やん→エディ・レッドメイン)


相木「実在の学者対決!と題して、はりきって予想対決をしましたが、正直、本部門はマイケル・キートンが受賞すると思ってました」
定やん「予想編でももらしたが、実はわしもそう思ってた」
相木「僕たち、何やってるんですか」
定やん「キートン以外のノミネート4人が実在の人物役という触れ込みやけど、実際のところ、キートンの役も落ち目の元ヒーロー俳優という自分自身の投影やから」
相木「要するに、全員が実在の人物をモチーフにしてて、キートンは役者仲間からこれまでの実績への評価と、自虐性に同情票を集めるという道理ですね」
定やん「それまでの『バードマン~』の勢いもあり、これでテッパンやと思いきや…」
相木「身体の自由がきかなくなる難病ALSにおかされた科学者スティーブン・ホーキング博士を演じたエディ・レッドメインは、それこそオスカー好みの難易度の高い芝居をクリアし、絶大な支持を得てはいましたから大穴という程ではないですが…」
定やん「予想を当てといて何やけど、ココは人情として、役者人生の集大成の役で、60才を過ぎて初ノミネートされたキートンにあげたかったなぁ。他のノミニー男優にはまだチャンスがあるやろし」
相木「オスカーはこれからの人材の弾みになる場合もありますが、その逆に押しつぶされる例もありますから」
定やん「コラ、縁起でもないこと言うたらアカン!」
相木「すみません。でもマイケル・キートンへの尊敬の念は、今回のノミネートにより消えることはありません」
定やん「もちろん!」


主演女優賞◇ジュリアン・ムーア(『アリスのままで』)
(予想:相木→ロザムンド・パイク 定やん→ジュリアン・ムーア)


相木「こちらは無難に本命が受賞。ようやくジュリアン・ムーアが報われましたね」
定やん「うむ。スピーチもビックリしてテンパってた初々しいレッドメイン君と対照的に、落ち着いとった。すごい貫録や。まあ今年は彼女以外、考えられんやろ」
相木「若年性アルツハイマーを患い、徐々に自我を失っていく女性を熱演した彼女は、ちゃんと病気に対するメッセージも放つ等、社会性のある発言もしているから立派です」
定やん「さっき言い忘れてたけど、レッドメイン君もその点はちゃんとおさえてたな」
相木「こういった役作りの苦労が眼に見えて分かる、いわゆる難病役がオスカーをとり易いのは分かります。ですが、たまには『博士と彼女のセオリー』でレッドメイン君を支えたフェリシティ・ジョーンズのような地味ながら縁の下の力持ちな役柄が受賞してもいいのでは?」
定やん「あんさんの推す『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクみたいな悪女役もそうやな」
相木「今回の主演賞の受賞をうけて、さらに難病役の需要が増すかもしれません」


監督賞☆アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』)
(予想:相木→アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 定やん→リチャード・リンクレイター)


定やん「という訳で、本日最大のサプライズのお目見えや!」
相木「さっきの定やんじゃないですが、僕もココは、自分で予想しといてアレですけど、リチャード・リンクレイターがゲットするとみてました」
定やん「なんせ、12年という歳月をかけてリアルタイムでキャストの時間経過を追うという途方もない物語を成立させたんやからな。公開の見込みもないし、いつ頓挫するか分からん企画を続ける労力たるや、想像つかんわ」
相木「その奇跡に対しての評価は、少なくとも監督賞という形で示すとてっきり想像していたのですが…」
定やん「去年の『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンに続き、メキシコ勢の奮闘は素晴らしい成果やけど…。やっぱ腑に落ちん」
相木「う~ん、結果として『6才のボク~』が、1部門しか受賞しなかったというのは、さすがに少ないかもしれませんね」
定やん「とりあえず、話題を次の作品賞に持ち越そか」


作品賞★『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
(予想:相木→『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 定やん→『6才のボクが、大人になるまで』)


相木「じゃあ定やんは、『6才のボク~』は、作品賞は逃すとみていたと」
定やん「当作のプロジェクトの偉大さと語りかける“時間”のテーマは皆認めるけど、純粋な出来自体は凡庸という評価も多かったからな」
相木「まあ、ルックはホームビデオで撮ったような、日常をきりとった繊細なインディーズ映画ですからね」
定やん「簡単にいうと、保守層の高齢アカデミー会員にはウケがよくなかったんやろ」
相木「同じ実験性でも、『バードマン~』の最新技術を駆使した1カット長回し技法は、受け入れる度量がまだあったと」
定やん「業界モノやし、内輪ウケもよかったんちゃうか」
相木「となると、インディーズ映画とメジャーの壁は、アカデミー賞でも厚いんですね」
定やん「だから、それは仕方ないにしても、監督賞ぐらいはあげてもええんちゃうの?同じ気持ちの人、多いはずやで」
相木「『6才のボク~』の仕打ちは、またまたアカデミー協会に波紋を呼びそうですね」
定やん「会員の平均年齢が60才を越えてるんやもの、推して知るべしや」


相木「さてさて、一息つきまして、他部門で何といっても残念だったのが、長編アニメーション賞の高畑勲監督『かぐや姫の物語』と、短編アニメーション賞の堤大介氏とロバート・コンドウ氏の共同監督作『ダム・キーパー』の落選です」
定やん「『戦隊シリーズ』と『ドラえもん』をごっちゃにした日本リスペクトに溢れた『ベイマックス』が受賞して、日本情緒を全開させた本家『かぐや姫~』が逃すとは、どういこっちゃ!?革新性から深淵なテーマから、格の違いは明白やろうに」
相木「ですよね。これは僕も納得いきません。まあ、なんせ向こうは大ヒット作ですから、アカデミー賞があくまでアメリカの映画賞であるという枠組を顧みれば、しぶしぶ頷くしかないですが…」
定やん「短編アニメ賞に輝いた『愛犬とごちそう』にも、わしは異議アリや!内容は素晴らしいが、一言、犬に人間の食べ物を与えちゃアカン!以上」
相木「ご、ごもっともです。授賞式自体はどうでした?」
定やん「司会のマルチ俳優ニール・パトリック・ハリスはさすがに芸達者で、オープニングの造り込まれたパフォーマンスから無難なすべり出し。テンポがよくて楽しかったな」
相木「でも来年には、普通過ぎて飽きてるような気がしないでもないです。僕は追悼パフォーマンスは、前みたいに映像を流して、観客の歓声をONにしてもらいたいですね。ジェニファー・ハドソンの歌は圧巻でしたが」
定やん「『Selma』の『Glory』等、歌曲賞のパフォーマンスは毎度のことながら、心を奪われるわ」
相木「レディー・ガガが熱唱した『サウンド・オブ・ミュージック』製作50周年のトリビュート・パフォーマンスも、ジュリー・アンドリュースが登場し、感動的でしたね」
定やん「でもサプライズには欠けたなぁ。去年のピザ出前ぐらいはしてもらわんと。パンツ一丁とマジックでは、ちょっとなぁ」


相木「という訳で、第87回アカデミー賞はちょっぴりシコリを残しながら、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が制しました」
定やん「よっしゃ、来年はもっと冒険して、あっと驚く的中率で圧勝したるわ!…と言いたいところやが、相木君、3月一杯で映画評論業を引退されるそうで…」
相木「ハイ。これからは、本業の脚本家の仕事に全精力を傾けます」
定やん「巳年うまれなだけに、往生際が悪いのう」
相木「読者の皆様、僕と定やんの予想合戦は今回で休戦いたします。映画評論は3月一杯で終了いたします。本ブログを読んでくださっている方がどれほどいらっしゃるか分かりませんが、この場をかりまして、ご愛読ありがとうございました」
定やん「また会おや!」


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